ワイコフ理論を徹底解説①コンポジットマンとレンジの本質とは?

今回からワイコフ理論について数回の記事にして解説していきます。

ワイコフ理論とはその名前の通り、リチャード・ワイコフ氏が考案した相場分析方法で、現在世界的に人気の高いスマートマネーコンセプトと思想的に共通点が多く、その源流の一つとも言われています。

ワイコフ理論については、以前も概要を解説していますが、今回のシリーズではより深くアキュムレーションやディストリビューションについて掘り下げていきます。

第1回目の今回は、ワイコフ理論の概要です。

  • ワイコフ理論はどんな時に役立つのか?
  • ワイコフって誰?
  • 大雑把にどんな理論か?

といったことを解説していきます。

本記事はワイコフ理論の概要のため、以前解説した記事と内容が一部重複します。
ご了承ください。

ワイコフ理論の何が役に立つのか

トレードをしていて、このような経験はないでしょうか?

  • トレンドの終盤で順張りのブレイクを狙ってすぐに損切になった
  • トレンド終盤のレンジで振り回された
  • レンジからのブレイクでダマシにあった

ワイコフ理論は、トレンド終盤やトレンドの途中で生じる分かりにくいレンジの動きを読むことに長けた相場分析方法です。

その背景にあるのは相場を動かす大口の市場参加者(現在で言うところのスマートマネー)です。

彼らの動向を相場の動き方と出来高を組み合わせて分析していくことで可能性を読み取る、というのが一つのコンセプトです。

ワイコフ理論を学ぶメリットは、レンジを読むことだけではありません。

トレンドの終盤を見極める力、ダマシを構造として理解する力、そして相場の「なぜ」を説明できる視点が身につきます。

多くの手法がエントリーポイントを探すことに集中する中、ワイコフ理論は市場全体の構造と支配権の移行に注目します。

そのため、目先の値動きに振り回されにくくなり、トレード全体の精度と安定感を高めることができるのです。

ワイコフ理論は株式市場をベースに考案されましたが、FX市場や指数、コモディティでも利用可能です。

リチャード・ワイコフ氏とは?

リチャード・デミル・ワイコフ氏(Richard Demille Wyckoff、1873-1934)は、アメリカのトレーダーであり相場研究者です。

ワイコフは15歳でニューヨークの証券会社で株式ブローカーとしてキャリアをスタートし、25歳の時には独立して自身の証券会社を運営していたそうです。

株式ブローカーや記者という仕事の中で、大口のトレーダーが如何にしてテープとチャートを解釈していたかを間近で見ることで、ワイコフは彼らがどのように市場を操作(支配)しているかを学びました。

「彼ら」の中にはかの有名なジョン・ピアモント・モルガンやジェシー・リバモアもいました。

そのような実体験から、「過去の値動きは大口トレーダーの動向を反映するものだから、これらを読むことで、将来の動きを予測できる」と確信し、彼自身も相場で大きな利益を出します。

ワイコフの考えは晩年の1931年に「The Richard D. Wyckoff Method of Trading and Investing Stocks」としてまとめられ、現在ではテクニカル分析の基礎の一つとなっています。

ワイコフは単なる理論家ではありません。

彼は市場を観察し続け、価格と出来高の動きから、大口参加者の意図を読み取ろうとした実践家でした。

彼の分析の基礎となるのは、「需要と供給」「原因と結果(Cause and Effect)」「努力と結果(Effort vs Result)」というシンプルな原理です。

これらは現在のスマートマネー理論やオーダーフロー分析にも通じる考え方であり、決して古びた理論ではありません。

ワイコフ理論とは、価格と出来高から市場の支配権の移行を読み解くためのフレームワークなのです。

彼の残した功績から、現在では、チャールズ・ダウ(ダウ理論)、W.D.ギャン(ギャン理論)、R.N.エリオット(エリオット波動)、A.Aメリル(ZigZagの考案者)と並んで、テクニカル分析における波動及びサイクル理論の先駆者として知られています。

補足:テープリーディングとチョークマンについて


19世紀後半から20世紀初頭、株価は電光掲示板ではなくティッカーテープと呼ばれる紙テープに銘柄、約定価格、出来高が次々と印字されていました。

トレーダーはそれを目で追い、価格の動きや出来高から今後の動きを予測していました。

また、当時の証券会社にはティッカーテープの情報を黒板に書き写す仕事の人がいました。それが「チョークマン」と呼ばれる人たちです。

リバモアも若いころチョークマンの仕事をしており、この経験からティッカーテープを読む方法を確立できたと言われています。

ワイコフ理論の概要

それではワイコフ理論はどんなものかの概要を解説していきます。

コンポジットマンについて考える相場分析手段

ワイコフ理論の出発点は以下の3つから始まります。

  • 価格は偶然ではない
  • 出来高も偶然ではない
  • 市場は痕跡を残す

前述の通り、ワイコフは株式ブローカーの仕事の中で、市場を動かすレベルの大口トレーダーと関わる経験をしました。

そこからワイコフはこう考えました。

市場を動かすのは無数の個人ではなく、まるで一人の巨大な存在(Composite Man、コンポジットマン)が動かしていると考えた方が市場を論理的に解釈することができる。

つまり、コンポジットマンについて理解さえすれば、相場の値動きを意図のある構造として解釈することができる、ということになります。

これはワイコフ理論内で一貫するテーマです。

ここでいうコンポジットマンとは、実在の人物ではありません。大口参加者の集合体を擬人化した思考モデルです。

なぜ擬人化するのかというと、市場を「意図のある行動」として理解するためです。

コンポジットマンが分かれば相場が分かる

コンポジットマンは「価格を動かす存在」ではなく「価格を利用する存在」で、彼らの目的はシンプルです。

安く集めて高く売ること。

そのために、彼らは一度に大量の注文を出すことはできません。
市場に与える影響が大きすぎて価格が上がってしまうからです。

だからこそ、注文を吸収し、ダマシを作り、揺さぶりを行い、退屈なレンジを形成します。これらは偶然ではなく、コンポジットマンのポジション構築の過程なのです。

この視点を持つことで、値動きは無秩序なものではなく、意図を持った構造として解釈できるようになります。

ワイコフ理論は一種のパターン分析と誤解されることがあります。
しかし本質はそこではありません。

ワイコフ自身が述べているように、市場の動きは常にユニークです。

コンポジットマンは状況に応じて最適な行動を取ります。
その結果として似た構造が現れることはあっても、教科書通りに繰り返されるわけではありません。

重要なのはパターンを覚えることではなく、背後にある意図を読むことであることは頭に入れておいてください。

ダウ理論との関係

ワイコフ理論は、チャールズダウの考えを引き継いでいます。

ダウ理論が「トレンドの存在」を示したのに対し、ワイコフは「その内部で何が起きているか」を説明しました。

具体的には、ダウ理論のトレンドの概念や市場構造について、ワイコフが

  • 需要と供給の視点
  • 大口の視点
  • 出来高分析

を用いて深化させています。

相場の4つの形態

ワイコフ理論のモデル

ワイコフ理論では相場の値動きを大きく4つに分類します。

  1. Accumulation:アキュムレーション、底値圏でのレンジでコンポジットマンの買い集め
  2. Mark UP:上昇相場
  3. Distribution:ディストリビューション、高値圏のレンジでコンポジットマンの売りさばき
  4. Mark Down:下落相場

この中でワイコフ理論が特に重要視するのがアキュムレーションとディストリビューションです。

アキュムレーションは「蓄積」という意味で、ここでは大口が底値で買い集める動きになります。

ディストリビューションは分配という「意味」で、ここでは大口が他の市場参加者に売りはらう(分配する)動きになります。

この考えはSMCでも踏襲されており、Power of Threeのモデルでも利用されています。

レンジの観察こそが重要

アキュムレーションから上昇トレンドが始まり、高値圏でレンジとなると必ずしもディストリビューションになるわけではありません。

場合によって更にブレイクするための小休止である「リアキュムレーション(Re Accumulation)」となることもあります。

また同じく、ディストリビューション後に下降トレンドが始まり、安値圏でレンジとなると必ずしもアキュムレーションが始まるわけではありません。

ここから更にトレンドが進むためにの小休止のリディストリビューション(Re Distribution)となることもあります。

このように、トレンド後のレンジがアキュムレーションなのかディストリビューションなのかを見分けるのは簡単ではありません。

しかし、いくつかのポイントを観察することで、その「意図」を読み取ることが可能になります。

まず重要なのは、レンジ内での値動きの質です。

  • 安値を更新するスピード
  • 高値を更新するスピード
  • 戻りの深さ
  • 出来高の増減

これらを総合的に見ることで、買い圧力が強いのか、売り圧力が強いのかを判断していきます。

例えば、下降トレンド後のレンジで、下値を試してもすぐに買い戻される動きが続く場合、それは売りが吸収されている可能性があります。これはアキュムレーションの兆候です。

一方で、上昇トレンド後のレンジで、高値を更新してもすぐに叩き落とされる動きが続く場合、それは買いが吸収されている可能性があります。これはディストリビューションの兆候です。

このような兆候を読み取っていくのがワイコフ理論です。

重要なのは、「レンジだから反転する」と決めつけないことです。

レンジは常に「原因(Cause)」を作っている最中であり、その原因の大きさが次のトレンドの大きさを決めます。

そのレンジの中で「何が吸収されているのか」を観察することが重要です。

多くのトレーダーはレンジを「方向感のない無意味な時間」と考えます。

しかしワイコフの視点では、レンジこそが最も重要な時間帯です。なぜなら、そこで大口がポジションを構築しているからです。

次回ではより詳しくAccumulationを解説します

次回はアキュムレーションについてより詳しく解説していきます。

モデルは以下の通りです。

これは一般的に底値圏での停滞した動きとして捉えられますが、これこそがワイコフ理論が最も得意とするところです。

アキュムレーションは単なる横ばいではありません。

そこでは大口が市場参加者からポジションを奪い取り、次のトレンドの準備をしています。

そして多くのトレーダーが損失を出すのも、このアキュムレーションの理解不足が原因です。

次回は、このアキュムレーションの内部構造を、イベントとフェーズの視点から詳しく解説していきます。

参考文献

The Wyckoff Methodology in Depth_ How to Trade Financial Markets Logically with Volume Spread Analysis and Supply & Demand
Wyckoff 2.0_ Structures, Volume Profile and Order Flow

 

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