
今回はワイコフ理論解説の2回目でアキュムレーションについて解説します。
アキュムレーションの動きは初見だと複雑に感じられると思います。
しかし、本記事では各フェーズやイベントについて「何が起きているのか?」を詳しく解説し、できるだけ分かりやすい構成にしています。
記事終盤では実際のチャートで生じたアキュムレーションの例もご紹介していますので、ぜひご覧ください。
なお、前回の記事をご覧になっていない方は以下からご覧ください。
Contents
アキュムレーションはどんな所?
アキュムレーション(Accumulation)は下降トレンドの最終局面からレンジを経て反発するまでの流れになります。

アキュムレーション開始時点では単に下降トレンドにしか見えない状態ですが、そこから時間をかけて底を固めていきます。
ワイコフ理論の考え方としては、アキュムレーションの時間が長いほど、そして出来高が多いほど、その後のトレンドも大きくなります。(Cause and Effect、Effort or Result)
アキュムレーションを考える上での注意点
本解説ではモデル図を用いて解説しますが、必ずしもモデル図のようにはなりません。
そもそもワイコフ理論は図形暗記ではない点にご注意ください。
これはワイコフも主張していることですが、価格は二度と同じ構造を作りません。
なぜなら、同じ構造が出るためには、
- 市場参加者
- 資金量
- 心理
- 外部環境
- ニュース
- 流動性状態
等が常に同じように再現される必要があるからです。
しかしそれは現実的に不可能です。
ではどうするべきなのかというと、柔軟性を持ちつつ各イベントとフェーズで骨格を保つことになります。
アキュムレーションの詳細

アキュムレーションを一言で言えば、「大口が静かに買い集める工程」です。
強い下降トレンド後に生じる横ばいの値動きで、この中で大口が売りを吸収しながらレンジを作ります。
強い下降トレンド中は売りが圧倒的優勢です。その中で、大口が
- 売りを吸収
- ポジションを支配
- 供給を枯らす
という行動をとることで、徐々に下げの勢いが落ちてレンジに移行していきます。
なぜこのような面倒なことをするかというと、大口(コンポジットマン)の最終的な目的は「将来もっと高く売ること」だからです。
高くで売るためには、できるだけ安く仕入れ、できるだけ供給を減らし、できるだけ多くのポジションを持つ必要があります。
だからこそこのような値動きを取ることになります。
全体の流れ、イベント
アキュムレーションの詳細について解説する前に、まずはアキュムレーション全体の大まかな流れについて解説します。

流れは以下の通りです。
↓
セリングクライマックス(Selling Climax)
↓
再度底値をテストして反発してレンジへ(Secondary Test~Upthrust Action)
↓
それまでの安値を一時的にブレイクして反発(Spring)
↓
レンジをブレイク(Jump Across the Creek)
↓
押し目を付けて反発(Back UP to the Edge of the Creek~Sign of Strength)
アキュムレーションでは下降トレンドの最中に始まり、時間の流れとともに下げの勢いが徐々に弱まってレンジ相場へ移行します。
そして、最後にそれまでの安値を一時的にブレイクしてストップを刈り取ってから大きく上げて上昇トレンドへ進みます。
ワイコフ理論では、アキュムレーションの時間が長いほどその後の上昇幅は大きいと考えます。
結果(Effect)= 上昇幅
時間はエネルギーで、レンジが続くほどはエネルギーが蓄積される、ということです。
つまり、大口が長い時間をかけてポジションを集めるほど、その後のトレンドも大きくなる傾向があります。
大口は一度に大量購入することはできません。
なぜなら自分の注文で価格が上がってしまうからです。
だからこそ、市場をダマしながらゆっくりと吸収してできるだけ安い価格でポジションを取っていく、というのがAccumulationになります。
フェーズとポイント
それではアキュムレーション内の動きをさらに詳しく見ていきます。

アキュムレーションはPhaseA~Eの5つに分類できます。
それぞれには以下のような特徴があります。
- A:下降トレンドが止まる
- B:レンジになりポジションを溜める
- C:底値を試す
- D:上昇してブレイク
- E:更に高値を更新して上昇トレンドへ
ではPhase Aから詳しく解説していきます。
Phase A

Phase Aは下降トレンドから徐々に勢いが落ちてレンジに入る前までの段階になります。
Phase Aは主に4つのイベントで構成されます。
- Preliminary Support(PS)
- Selling Climax(SC)
- Automatic Rally(AR)
- Secondary Test(ST、ST as SOS)
リアルタイムで「今Phase Aに入った!」と決めることはほぼ不可能ではありますが、イベントが進むにつれて徐々に下落の勢いが弱くなっていることを感じる期間になります。
Phase Aは「トレンド終了の可能性が高い」と判断する時期であり、まだ買いを入れられる段階ではありません。
むしろ下げの圧力が弱まっていることを感じて売りポジションを決済すべき時期です。
Preliminary Support(PS)

Preliminary Support(PS)は下降トレンド中の安値です。
それまでの流れ的に今後も更に安値を更新する可能性がある状況です。
しかしここでは出来高が多く、市場参加者が急増し、買いポジションのクローズ(損切)が多く発生します。
大口が「そろそろ行き過ぎだ」と感じ始めており、買いを入れる準備をしている(もしくはすでに試し玉を入れている)段階です。
しかしここではまだ止まりません。
Selling Climax(SC)

PSから少し反発した後に生じる強い下げです。
出来高を伴う下げで、下降トレンドの最安値を更新します。
PS後の反発で「これで下げは終わった」と思っていた市場参加者を絶望させます。
これによりパニックになり、更にポジションを投げ出すことで価格が下落します。
状況によっては悪いニュースが出ていることもあります。
しかし、この裏側で売りを吸収しているのが大口です。
Selling Climaxで売る側が減ってくると必然的に上昇し、次のイベントであるARに移行します。
Automatic Rally(AR)

Selling Climax後の反発・反動です。
ARは強いほどSelling Climaxが信ぴょう性を持つようになります。逆に弱い反発だと単なる調整で終わる可能性が高いです。
ARの高値は、Phase Dで重要な意味を持つようになりますので注目しておきます。
Secondary Test(ST)

Phase A 最後のイベントで、Selling climax付近の価格まで近づきます。
ここでの注目ポイントとしては以下の2点です。
- 下げの勢いが弱い
- 出来高がSCと比べて減っている
売り手が弱まっているのであれば、当然ながら下げにくく、そして出来高も減少します。
ここにきてようやく「売り圧力が弱まっているかな?」と考えることができますが、まだそれがPhase Aどうかを断定するのは難しいです。
Phase B

Phase A 最後のSTで「下げが弱まっているかな?」と思えるところから始まるPhase Bは、アキュムレーションの中で最も長く、最も退屈で、最も重要な期間です。
多くのトレーダーが方向感のなさに耐えきれず、この期間で振り落とされます。
ここで大口が少しずつ買いポジションを構築していきます。
値動きの特徴は以下の通りです。
- 上下の細かなスイングが増える
- 何度か高値・安値を試す
- Phase Aよりも期間が長い
Phase Bでレンジの動きになっていることを確認できた時点でようやくPhase AとPhase Bの確定となります。
ただし、Phase Bと分かってもまだポジションは取りません。
次のPhase C がしっかりと来るかを待ちます。
Upthrust Action

Phase B 内での高値です。
Phase AのARの高値を一時的に抜けることが多いのが特徴で、これは買いがどれくらい強いかを試すテストという意味合いが強いです。
この上昇が強いほどアキュムレーションの信頼性が高まります。
SMCで言う所のCHOCHもしくはインターナルスイング内のCHOCH的な立ち位置で、Phase Aまでの動きと比較して、明らかに相場が変わってきていることを知らせるシグナルになります。
Upthrust Action後もPhase Bは続き、この過程の中で一時的にSelling Climaxの安値を割ることがあります。(Secondary Test as Sign of Weeknes、ST asSOW)
Phase C

下降トレンドを経てレンジに入ってきた所で生じる揺さぶりの値動きです。
ここで「本当に売り手はもういないか?」を確認する最後の下げである「Spring」が生じる重要な過程です。
Spring

それまでのレンジの下限を一時的に下抜ける値動きです。
Springはコンポジットマンの仕掛ける罠で、レンジ下限に溜まった売り注文を一掃(Sweep)して、最後の買いを入れるポイントで、False Breakout(偽ブレイク)そのものです。
ここで新規の売りが大して入らず、出来高も少ないまま反発すると本物のSpringであると判断できます。
本物のSpringの場合ほど反発が早く、ヒゲだけを残したり、包み足が出現したり大陽線が出現したりします。
しかし逆に売り手が多くて出来高も多いと、そのまま下にブレイクしていくこともあります。ここで大口が「無理だ」と判断すると、アキュムレーションがリディストリビューションに変わってしまうこともあります。
Test

Sprnigで反発した後に一時的に下げて底値をテストする動きです。
このテストではSpringの安値を割りません。
長くレンジが続き、明らかにSpringだと思えた後のTestであれば、ここでロング注文を入れることも可能です。
Phase D

Phase Dは「方向の顕在化」の期間です。
スプリング後の上昇の勢いに乗って、それまでのレンジの高値をブレイクする期間です。
Phase Cでそれまでの売りが一掃されたことで上げやすい状況となり、ここで上への方向性が明確になってきます。Accumulationも終盤に入っていることを確認できます。
Jump Across the Creek(JAC)

Phase A でつけたARの高値(Creek)をブレイクします。
ARには多くの売り注文が残っており、ここを明確にブレイクできるかどうかで、売りと買いの支配権が変わったかを確認できます。
大口がコストを払ってでもブレイクさせたい場合は、ブレイク時に大量の出来高と共に強いローソク足が出現します。
Back Up To the Edge of the Creek(BUEC)

Creekをブレイクした後の試しの動きです。
レンジをブレイクした後に再度戻ってきてから反発する動きでPhase A~Dまでの動きがしっかりしていた場合、最高のエントリーポイントになります。
基本的にはこのBUECでエントリーするのが理想になります。
Spring直後のTestで入るのも良いですが、ここは自信があるときのみに限定して、下降トレンドからレンジになってきたと判断したら静観して、ARブレイクから再度ARまで押してきたところで入りましょう。
Phase E

上昇トレンドであるマークアップへの移行段階です。
ついにレンジ脱出し、上昇の波動構造へ移行ます。
ここではもう「レンジ分析」ではなく「トレンド分析」に切り替わります。
やることはただ一つ、トレンドに乗ることです。レンジ逆張りの発想は不要です。
市場にもう迷いはありません。
勝った側が支配し、負けた側が流動性を提供します。
Sign of Strength(SoS)

Phase Dの高値をさらにブレイクしていくとSign of Strengthとなり、更に上昇圧力が強いことを意味します。
この時点で高値を更新する動きですので、トレンドフォロー戦略をしていくことになります。
Last Point of Support(LPS)

SoS後の押し目です。
そのひとつ前の押し目であるBUECでロング出来なかった場合は、ここが次のロングポイントで、買い増しのポイントにもなります。
アキュムレーションのチャート例
実際のチャートでアキュムレーションの例を見ていきましょう。
比較的分かりやすものを選びました。
ドル円15分足

比較的しっかりとしたアキュムレーションの流れです。
Upthrust Action後、安値を割っていますが、これはSecondary Test as Sign of Weeknes(ST asSOW)というもので、Springを思わせるような動きです。
しかしその後の指標(FOMC)で一気に下げて(Spring)強く反発しました。
このケースでは反発が強かったためSpring後のTestはありませんでしたが、Creekブレイク後にしっかりとCreekまで押してから高値をブレイクしています。
ポンドドル1時間足

ややコンパクトにまとまったAccumulationです。
しかし、しっかりとポイントを押さえた動きになっており、Spring→Test、Creekブレイク後の押しもあります。
まとめ
アキュムレーションは、下降トレンドの終盤で大口参加者(コンポジットマン)が静かに買い集める過程です。
一見すると方向感のないレンジに見えますが、その裏側では次の上昇トレンドの準備が進んでいます。
本記事で解説したアキュムレーションの流れを整理すると以下の通りです。
- Phase A:下降トレンドの終わりを示す動き(PS・SC・AR・ST)
- Phase B:レンジの中で大口がポジションを構築する期間
- Phase C:Springによる最終的な売りの掃除
- Phase D:レンジ上限をブレイクして上昇の兆候が現れる
- Phase E:上昇トレンド(Mark Up)へ移行
重要なのは、ワイコフ理論を単なるパターンとして覚えないことです。
ワイコフ理論の本質は、
にあります。
つまり、
- 売りが吸収されているのか
- 買いが吸収されているのか
- どちらの勢力が主導権を握っているのか
これらについて観察することで、次のトレンドの方向性を予測していくのです。
多くのトレーダーはレンジを「方向感のない退屈な時間」と考えます。
しかしワイコフの視点では、レンジこそが最も重要な時間帯です。
なぜなら、その中で大口がポジションを構築し、次のトレンドのエネルギーを蓄えているからです。
次回はアキュムレーションとは対をなすディストリビューションについて解説していきます。
ワイコフ理論は理解が深まるほど、相場の見え方が大きく変わる分析手法です。
ぜひチャートを見ながら今回の内容を確認してみてください。
























