「2022年の国内FXの取引高が初めて大台の1京円を突破した」というニュースが出ました。
一般財団法人金融先物取引業委員会によりますと、2022年の店頭外国為替証拠金取引高が1京2074兆円と過去最高になりました。
店頭外国為替証拠金取引高を簡単に言えば、国内FX業者の取引高、つまりは国内業者を利用する個人トレーダーの取引高になります。
金融先物取引業委員会には、49のFX業者が登録しており、それぞれが毎月の取引高を先物取引業委員会に提出して、統計が発表されています。
そのためこの数字は、2022年の国内FX業者を利用した個人トレーダーの総取引高が1京2074兆円もあった、という意味合いになります。
兆の上の「京」という単位はなかなか見ることがないですし、市場の取引高についてご存じでない方にとっては、この数字がどれだけのものか分かりにくいと思います。
そこで今回は、過去の取引高と推移してどれだけ伸びたのか、取引高が伸びた要因などについて探っていきます。
国内FX取引高の推移
冒頭でお伝えした通り、2022年の国内業者を利用した個人トレーダーの総取引高は1京2074兆円でした。
これだけだと分かりにくいですので、過去の取引高の推移をグラフ化しました。
リーマンショック直後の2009年から現在までの流れを見ると、10年前の2012年頃までは2000兆円程度の取引高だったのが2013年から急上昇。
2015年に5000兆円を超えて取引高は下がっていきますが、2020年から更に上昇し、2022年でドカンと取引高を伸ばして1京円を突破しました。
こう見ていくと、ここ10年で個人のFX取引高は6倍程度に増えたと言えます。
確かに「FX」という名前を聞く機会も増えましたし、一般にも投資先として「FX」が浸透して、よく知られるようになったように感じます。
国内FXの取引高が伸びる唯一の理由
ドル円が大きく動くと、国内FXの取引高が伸びます。
国内FXの取引高が増えたことに色々な憶測記事が書かれましたが、ドル円の変動と国内FX取引高はダイレクトにリンクしています。
まずは先ほどの国内FX業者の取引高の推移に加えて、ドル円だけの取引高も追加したグラフをご覧ください。
青色が全ての通貨ペアの取引高を合算したもので、橙色が各年のドル円の総取引高です。
ほとんどの年でドル円の取引高が、総取引高の半分以上を占めていることが分かります。
特に2022年のドル円の取引高は9,000兆円となっており、総取引高の約75%がドル円の取引となっていました。日本人にとってFX取引とは、ドル円の取引と言っても過言ではないレベルです。
次に月別の総取引高とドル円レートの推移をご覧ください。
青色が各月の総取引高で、橙色のグラフがドル円のレート(終値)です。
ドル円が大きく変動、特に上げたと時に取引高が大きく上昇しているのが一目瞭然です。
過去の目立ったイベントで言えば・・・
- 2012年終わり:民主党政権が終わり、自民党政権に変わって急激な円安
- 2014年後半:日銀が大幅な量的緩和の実施による円安
- 2016年終わり:トランプ大統領当選による「トランプ・ラリー」
- 2020年3月:コロナショックによるドル円の大変動
- 2021年~2022年:日米の金融政策の違い・金利差によるドル高
こういった時に取引高も急上昇しています。
逆に、2017年から2020年のコロナショック前までは非常に値動きが小さかったため、取引高も下がっています。
他の通貨ペアの取引高は?
国内FXの取引高はドル円が圧倒的に多く、ドル円相場に依存していることが分かりました。
では、他の通貨ペアはどうなのでしょうか?
下のグラフはドル円以外の通貨ペアの取引高を合算したものです。
2009年は約1,000兆円程度でしたが、それから徐々に伸びて2022年は3,000兆円。確かに伸びてはいますが、ドル円程の上昇幅ではありません。
増減の波もドル円のそれと似ており、「ドル円の取引をするついでに他の通貨ペアに手を出す人が増えたのではないか?」と思える結果となっています。
つまり国内FXの取引高は、「ドル円が動くかどうか?」にかかっていると言えそうです。
他の通貨ペアを細かく見ていく
下のグラフは、ドル円を含めた取引高の多い通貨ペアの推移を示しています。
ドル円が圧倒的過ぎです。
人気があるはずのユーロドル、ユーロ円、ポンド円であっても、ドル円と差が開きすぎて「その他大勢」に成り下がっている印象です。
これだと少しわかりにくいですので、ドル円だけを除外したのが下のグラフです。
ここ数年の推移を見ると、ドル円以外ではポンド円、豪円、ユーロ円といったクロス円が人気の様です。特にポンド円はドル円に次いで第2位の地位を固めています。
過去を見ると、ユーロ危機の2010~2013年頃はユーロ円が大きく伸びていますが、その後の停滞によってポンド円や豪円に追い抜かされてしまいました。
また、世界で一番取引量が多く、スプレッドも狭めのユーロドルはそれほど取引高は多くありません。やはりドル円やクロス円の方がなじみ深く、計算しやすいのが影響しているように思えます。
どうなる?今後の国内FX
2022年の国内FX業者の総取引高は1京2074兆円ということでした。
これを1日平均にすると約49兆50000億円になります(244日営業日として).
この数字もとてつもなく大きいものですが、BISによると2022年4月の世界の外国為替取引全体は、1日平均で7兆5000億ドルでした。
1ドル130円と考えると975兆円・・・。
外国為替市場全体で見ると、国内FXの取引高は5%に過ぎません。
しかし、取引高がドル円に傾いていることを考えると、昨年のドル円相場は、国内FX業者を利用するトレーダーの影響を色濃く受けたと言えるのではないでしょうか。
また、日本人のFXトレーダーが利用するのは国内FX業者だけではありません。
最近では海外FX業者も勢力を伸ばしており、その中でも特に人気の高いXMなどは、下手な国内業者よりも圧倒的に知名度があります。
このような海外業者を利用する日本人トレーダーの取引高は今回の資料には含まれていませんが、全てを合算すると、もっと凄い数字になることが予測できます。
しかし、本記事内で書いたように、日本人トレーダーのFX取引高はドル円の変動に大きな影響を受けます。
今後もドル円が大きく動けば取引量は増え続けると考えられますが、2022年レベルの変動が続くかと言われたら、その可能性は低いのではないでしょうか。
これからもFX市場だけでなくFXトレーダーの動向についても注視していきたいと思います。