テクニカルインディケーターのオシレーターといえば、ストキャスティクス、RSI、MACD、DMIというのが世界的にもメジャーですが、日本ではそれらに勝るとも劣らないくらい人気の高いオシレーターがあります。
それがRCI(Rank Correlation Index:順位相関指数)です。
RCIに興味を持っている方は多いようで、私のもう一つのブログであるMT4インディケーター貯蔵庫でもRCIに関するインジの人気は高いです。
しかし、RCIは海外では全くといって言いほど人気がありません。
海外のフォーラムで「RCI」と検索しても大したネタが出てこないのです。むしろ「Ichimoku」と検索した方が、多くの情報がヒットするくらいです。
RCIが日本で人気のある理由については後述しますが、私自身もかつてRCIというインジケーターについて真剣に検証したことがありますので、今回はRCIについてご紹介し、最もメジャーな3本RCIを使った手法とその優位性について解説します。
Contents
RCI(Rank Correlation Index)とは?
RCIは統計学で有名なスピアマンの順位相関係数を利用したオシレーターで、RCIも順位相関指数と訳されます。
詳しい計算方法等については後述しますがRCIは任意の期間において「時間」と「価格」に順位をつけ、それらにどれだけの相関関係があるかを求めます。
- 時間が進むにつれてローソク足の終値が上昇し続ければ、時間の経過とローソク足の推移には正の相関があると判断され、その時のRCIは1(もしくは100%)に近づきます
- 逆に時間が進むにつれてローソク足の終値が下落し続ければ、時間の経過とローソク足の推移には負の相関があると判断され、その時のRCIの値は-1(もしくは-100%)に近づきます
- 相場がレンジ相場となって時間の推移とローソク足の推移に相関がなければ、RCIの値は0になります
RCIとRSIの違いについて
RCIと非常に似た名前のインジケーターにRSIがあります。
両者ともにオシレーターであることから、混同されがちです。
RCIとRSIの違いについて簡単に説明すると、以下のようになります。
n期間において、時間と価格の相関を示す
RSI
n期間において、上昇と下落でどれだけ比率に差が生まれたのかを示す
RSIは、期間内の上昇幅と下落幅の比率から相場の過熱感を示すのに対し、RCIは価格と時間の相関関係に注目します。
計算式的に、相場の過熱感を把握するのであればRSIの方が優秀ですが、レンジ相場では機能しにくいデメリットがあります。
一方でRCIはレンジ相場とトレンド相場のどちらにも対応することができますし、同時に違うパラメーターのRCIを使うことで、より精度の高い分析ができるようになります。
基本的なRCIの考え方
RCIの使い方の基本は、その他大勢のオシレーターと同じく、下限まで来たら「売られすぎ」と判断してロング、逆に上限まで来たら「買われすぎ」と判断してショートです。
他にも下限から上げてきたらロング、上限から下げてきたらショートという使い方もあります。
RCIの計算方法からすれば、「これだけ長く時間と価格に高い相関関係が続くわけがないから、そろそろ崩れてくるだろう」という考えで逆張りに使う、という考えになるのでしょう。
RCIの計算方法
少し複雑ですがRCIの計算方法は以下のようになります。
- d = 日付の順位と価格の順位の差を2乗し、合計した数値
- n = 任意の期間
- 日付の順位:当日を1として、遡りながら2,3,4・・と順位をつける
- 価格の順位:期間中の最高値を1として、高い順に2,3,4・・と順位をつける
基本的にRCIが0%を上回っているときは上昇局面、RCIが0%を下回っているときは下降局面と判断します。
値が0の時は価格と時間に相関関係が無いので、トレンドは無いと判断します。
特に人気が高いのがRCI3本
RCIは1本のラインが上下するオシレーターです。
しかし、多くのトレーダーさんのブログを見ると、RCI1本だけを使うのではなく、3つのパラメーターのRCIを同時に表示させた「3本RCI」の人気が非常に高いです。
(3本RCIのパラメーターは9、26、52です)
私が知る限り、この3本RCIを初めて公開したのは「投資を楽しもう!」というブログを運営されていた「てきとう」さんです。
確か2007年くらいからブログを始められて、3本RCIとボリンジャーバンドを組み合わせたトレード方法を確立し、あっという間に数億円の資産を築いた凄いトレーダーさんです。(当時はレバレッジ規制がありませんでした)
私もリアルタイムでてきとうさんのブログを見ていましたが、マルチタイムの非常に細かいチャート分析で、バシバシと面白いくらいに相場を当てていた事をよく覚えています。
10年以上前からトレードをやっている方なら、てきとうさんのブログを見て3本RCIの魅力に取り憑かれた人は多いのではないかと思いますし、実際にてきとうさんのフォロワーは多く生まれています。
それから3本RCIをさらに有名にしたのが、鳥居万友美さんです。
彼女は3本RCIについて解説した書籍を数冊出版しています。書籍の内容としては、てきとうさんのブログと比較すると数十段劣るのですが、初心者向けなので仕方がないでしょう。
そして3本RCIは現在でもGMMAとRCIのノッティーさんなど、多くのトレーダーから支持されて使われ続けています。
3本RCIの狙い所
3本RCIでは、長期(52)、中期(26)、短期(9)の3つの期間のRCIを表示します。
同じインジケーターでも、3本の移動平均線をローソク足に表示させた場合は、ローソク足や移動平均線同士の位置関係や向きなどから色々な事が見えてくるのですが、3本RCIの場合は-1~1(-100~100)の間を上下するだけなのでほとんどの状況下ではよくわからない、というのが正直なところです。
しかし、特定の状況下では非常に有効なシグナルとなることがあります。
それが以下の3つです。
- 3本RCIが上限、もしくは下限に揃った時(逆張り)
- 3本RCIが同時に同じ方向を向いているとき(モーメンタム)
- 3本RCIの中で長期と中期が上限もしくは下限にあり、短期がその方向に向かっているとき(押し戻り)
ではこれらの状態が本当に機能するのかについて考察・検証していきたいと思います。
3本RCIが上限、もしくは下限に揃った時(逆張り)
これが3本RCIの考え方の中では一番有名で、逆張りのチャンスとされています。てきとうさんはかつてブログでこのように書いておられました。
「売り」 RCI・9本線・26本線・52本線が同時に+80%以上になる。高い山頂はRCIが+100%まで上昇する場合があります。ボリンジャーバンドも+2σくらいになる。高い山頂は+2σをオーバーします。その時点での山頂や峠になる確率が高いです。
「買い」 RCI・9本線・26本線・52本線が同時にー80%以下になる。深い谷底はRCIがー100%まで下げる場合があります。ボリンジャーバンドもー2σくらいになる。深い谷底はー2σ割れします。その時点での谷底になる確率が高いです。
本当に3本RCIが上限や下限に揃うと相場が反転しやすいのでしょうか?
3本RCIが上限もしくは下限に揃ったら矢印の出るインジを作成して検証してみました。
このインジは、3本RCIが上限or下限に位置し続ける限り矢印が連続します。
以下がドル円とユーロドル4時間足のシグナルです。(スクロールして下さい)
どうでしょうか?
場合によっては3本RCIが上限や下限にへばりついたままトレンドが進むこともあるものの、高い精度で相場の天井と底を当てています。
私も今まで色々なロジックやシグナルを見てきましたが、無裁量でこれだけ当てられるのはなかなかないと思います。
この3本RCIの精度は、時間軸が大きくなるほど顕著です。
これに加えて、ローソク足やサポレジライン、ボリバン等を組み合わせればさらに精度を高めることが出来るでしょう。
やはりこの考え方は多くの人から支持されるだけの事はあると思います。
ついでに・・・
3本のRCIが同時に上限や下限に到達すると反発しやすいことが分かりました。
しかし3本がそろったらすぐに反発するというわけではなく、下のチャートのようにしばらく下限にへばり付く事もあります。
こうなることを避けるために、「3本RCIが上限や下限に到達後、3本全部が上限や下限から離れてきた時にサインが出たらどうだろうか?」と考えて、インジを作ってみました。
このチャートでは赤いサインが3本RCIが上限で揃ったポイントを示し、白いサインが3本のRCI全てが上限(0.8)から離れてきたタイミングでサインが出ています。
ではこのインジを表示させたドル円とユーロドルの4時間足をご覧ください。
(白いサインになります)
どうでしょうか?
サインは遅れて点灯しますのでピンポイントで天井や底を狙うことは出来ませんが、その分だけしっかりと反転を見せたところでサインが出ます。ダマシも結構避けられています。
個人的にはこういった使い方も有りかなと思います。
3本RCIが同時に同じ方向を向いているとき(モーメンタム)
3本RCIの向きはよくバラバラになりますが、時に3本が同じ方向を向くときがあります。
移動平均線と同じ考え方になりますが、3つの期間のRCIが同じ方向を向くということは、それだけ相場に勢いがあると解釈することが出来ます。
そこで、3本RCIが同時に上向き、もしくは下向きになった時にサインの出るインジを作って検証してみました。
以下がドル円とユーロドル4時間足のチャートです。
予想以上にシグナルの頻度が多くて驚いています(笑)
3本RCIが同じ方向を向いたらサインが出るようにしているので、順張りの時もあれば逆張りの時もありますが、ボリバンを利用してトレンド方向を絞ってやれば良い感じでバンドブレイクが狙えそうです。
また、これを上位時間軸に表示させて、サインが出たところで「勢いが出てきた」と解釈して、執行時間軸でピンポイントで狙っていく戦略も良さそうです。
単品で利用するよりは、他のやり方と組み合わせて上手く行きそうですね。
3本RCIの中で長期と中期が上限もしくは下限にあり、短期がその方向に向かっているとき(押し戻り)
上昇トレンドが続くと、長期(52)と中期(26)のRCIが上限にへばり付くことがあります。
その状態で、短期(9)のRCIが下から上に向かって来た時も良いエントリーチャンスです。
エントリーポイントの種類としては、押し目買いや戻り売りになります。
これをシグナル化しました。
個人的には、このエントリーは「リングのロープ際に追いやられた相手を、ここぞとばかりに殴りつける」イメージで、勝ちやすい印象を持っています。
以下がドル円とユーロドル4時間足のチャートです。
長期と中期のRCIが上限や下限に揃うと、必然的にローソク足チャートでもトレンド状態になります。
そのため、このシグナルだけでもトレンド方向に従った押し目買いや戻り売りが出来ています。
加えて上位時間軸の方向や勢いも加味してやれば、さらに精度は上げられそうです。
すごいぞ!3本RCI
今回は3本RCIについて深掘りしてみました。
RCIの条件を決めてシグナル化すると、視覚的にも明確になって分かりやすいですね。
3本RCIの使いどころと、優位性が伝われば幸いです。
3本RCIは人気が高いだけあって、しっかりと使いこなせれば精度の高いトレードの一助になるのは間違いありません。
ただし、3本RCIも万全というわけではありません。
所詮はオシレーターですので、ローソク足の状態やトレンド方向、サポレジラインと上手に組み合わせて解釈する必要はあると思います。
まだ使ったことがない方は、一度表示させて見ると新たな発見があるかもしれませんよ。
なお、今回私が作成したインジケーターの一部は、Forex Standard ClubもしくはXM版にてダウンロード出来ます。
詳しくは以下をご覧ください。
RCIを表示するインジケーターについては以下をご覧ください。