【レバレッジ規制】店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会のまとめ(第3回目まで)

昨年2017年9月の終わりに、日経新聞より「金融庁がレバレッジを引き下げて、現行の25倍から10倍程度にまで下げることを検討している」という報道が出ました。

当ブログでも、レバレッジ10倍案について私の考える事をまとめています。

このレバレッジ規制案は正に「寝耳に水」で、それ以降、国内業者でトレードをしている多くのトレーダーが今後のFXについて改めて考える「事件」となりました。

あれから半年が過ぎましたが、まだレバレッジ10倍へ引き下げる事が決まったわけではありません。

明らかに金融庁側が「レバレッジ規制をしたい!」という思惑はあるようですが、現在は金融庁が定期的に開催している「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」にて、様々な角度からFXについて見直し、本当にレバレッジ10倍にする必要があるのかどうかについて検討しているところです。

有識者検討会は4月11日の時点で既に3回行われており、それぞれについてどのような議論がなされたのかが金融庁Money Plusさんでまとめられています。

今回の記事では、これらのサイトの情報からこれまで3回の有識者会議でどんなことが話し合われたのについてまとめたいと思います。

 

第1回目(2018年2月13日開催)

第1回目では、主になぜレバレッジ規制が必要なのか?についての金融庁側の主張がメインだったようです。

金融庁の提出した資料によるとFXの取引額は2015年度には5000兆円を突破しており、店頭FX業者の決済リスク管理を不十分にしておけば、顧客やカバー取引先だけでなく外国為替市場や金融システムに影響を及ぼす可能性がある・・・というのがレバレッジ規制が必要と考える理由のようです。

つまり、何らかの急激な相場の変動によって決済リスクが生じて、日本発の金融ショックになるのを防ぎたい、という考えがあるように思えます。

過去最大の相場変動を基にすると、カバー可能なレバレッジは8.7倍?

金融庁の資料では、1985年以降の各通貨ペアにおける最大の変動をカバー出来るだけのレバレッジ水準についても試算されています。

全部を平均すると8.7倍。
8.7倍であれば、問題なくカバーできて決済リスクも低減させられるということで、この数字を参考にしてレバレッジ10倍案が出ているのでしょう。

しかし、この数字は明らかに大雑把です。
各通貨ペアの取引量や変動率によってレバレッジ変えるという選択肢もあるはずだと個人的には思います。

 

 

第2回(2018年3月12日開催)

第1回目では金融庁側の主張が主でしたが、第2回目ではFX業者側の主張について議論がなされました。

Money Plusさんの記事によると、冒頭でセントラル短資の松田社長が以下のような発言をされたそうです。

  1. 店頭FX業者は、これまで協会を通じて当局とも密接に連携しつつ、リスクの顕現化を防ぐために相当高度な管理手法を整備してきた。
  2. 市場の取引規模と業者が負うリスクの規模は同義ではなく、後者は取引を相殺し、圧縮した後のポジションと相関する。市場の拡大は、取引ルールの整備、リスク管理と顧客サービス改善に向けた努力の結果、利便性が高まり、投資家に選好されたことによる面も大きい。
  3. 多様な通貨を機動的かつ低コストで投資できる機会や、為替リスクをヘッジする手段としてのFX取引の効用は、広く認知されている。
  4. 店頭FX取引の社会的・経済的効果として、市場の流動性を増し、東京国際金融市場の発展に寄与している。
  5. 経済の実態を反映しない形で相場が一方的に触れるオーバーシュートに歯止めを掛けることで、市場を安定させる機能も果たしている。

つまり、「FX取引は資産運用の一つとして確立されており、市場の安定にも寄与している、余計なことするな!」という意見です。確かにその通りです。

もしレバレッジが10倍まで下がってしまった場合は、FX取引の魅力は大きく損なわれ、投資家のチャンスも失われます。さらには取引量の低下によるマーケットインパクトも無視できないものになるでしょう。

その後は「金融先物取引協会」、「GMOクリック証券」、「SBI証券」、「セントラル短資FX」、「東京金融取引所」より提出された資料から議論が進んだようです。

どの業者の資料でも、業者内のシステムからどのようなリスク管理をしているのかについて詳細に書かれています。
個人的に気になった資料についてご紹介します。

外国のレバレッジ規制状況について

金融先物取引業協会からの資料に海外のレバレッジ規制についてまとめたものがありました。
資料によると主要国のレバレッジ事情は以下のようになっているようです。

各国のレバレッジ事情
・アメリカは主要通貨50倍、その他は20倍
・欧州では主要通貨が30倍、その他が20倍
・イギリスでは取引経験が1年以上なら主要通貨で25倍、その他は20倍
・韓国では10倍
(主要通貨には日本円、米ドル、ユーロ、英ポンド、カナダドル、スイスフランが含まれる)

以上を見ると、日本の現状であるレバレッジ25倍でも決して高いものではありません。
また、通貨ペアや流動性について考えれば、韓国のように全部まとめて10倍にするのも賢明ではないと思われます。

デリバティブの中ではFXのレバレッジが一番低い

SBI証券の資料によると、FXと他のデリバティブ商品を比較しても、25倍というレバレッジは最も低い数値となっています。
これなら「規制するなら日経平均先物やCFDを先にやるべきじゃないのか?」、「FXのレバレッジは決して高いわけではないから10倍にする必要は無い」と言いたくなります。

また、SBI証券の未収金については、2018年2月現在でFXの未収金件数が5件で125万円であるのに対して、先物オプションの未収金件数は101件で13億900万円となっており、FX部門におけるリスク管理はしっかりとなされていることが強調されています。

私はFXトレーダーでレバレッジ規制反対の立場ですから、このような資料を見ると「何で業者がしっかりしているのに金融庁は無理矢理にでもレバレッジ規制をしようとするのか?」と疑問に思います。
どうも「投資家保護」や「金融ショックを防ぎたい」というのは建前としか思えません。

 

 

第3回(3月29日開催)

第3回目も2回目に引き続き店頭FXの決済リスクについてがテーマとなっており、各社から資料が提出されています。

しかし、Money Plusさんの記事を読む限りでは、第3回目は「店頭FXの公正さ」についての議論になることがあり、検討会の目的である「決済リスクへの対応」から少し離れてしまうこともあったようです。

個人的には、レバレッジ規制をして決済リスクを低めようとすればするほど、店頭FXの収益は低くなりレートの公正さは失われると思います。さらにそれだけではなく、スプレッドの拡大、取引ツールやサーバーへ投資不足などから、我々トレーダーも不利益を被るであろうことは目に見えています。

それでは、第3回目で提出された資料の中で気になったものをご紹介します。

株式トレードの方が収益が高いって誰が言った?

これは神戸大学大学院の岩壷教授の資料で、FX取引と株式取引の収益について比較しています。

表を見る分かりますが、株でもFXでもプラスの収益になった人の割合は変わりません。
もちろん株とFXではポジション保有期間が違いますが、それでも株が圧倒的に勝ちやすいというわけでは無い事が示されています。

レバレッジ規制強化でトレーダーはどう行動する?

同じく岩壷教授の資料で、レバレッジが10倍になった時にFX市場やFXトレーダーはどうなるかについてまとめてあります。

個人的に私が一番気になるのは一番下の「規制の届かない市場に国内投資家を向かわせる」点です。

ここで言う規制の届かない市場とは、仮想通貨と海外FXです。
仮想通貨については規制が追いついていない状況ですし、海外FXは日本の法の外で行われる取引です。

両者ともしっかりとした業者はあるものの、中には詐欺的なものもあるのが現実です。
「投資家保護」の名目でレバレッジ規制をして、トレーダー達が更にハイリスクな業者で取引したら規制の意味がありません。

つまり、抜け道が豊富にある以上、レバレッジ規制を厳しくしても意味が無いのです。
それなのに、なぜ金融庁はレバレッジ規制を推し進めようとするのでしょうか?

 

本当にレバレッジ規制する必要があるの?

今回の記事を書くにあたって、金融庁の資料やMoney Plusさんの記事を何度も読み返しましたが、やはり私にはレバレッジを10倍に下げる必要性が見えてきません。

金融庁には、顧客保護や決済リスクの低減よりも重要な陰謀があるように思えます。
他の方も言われていますが、金融庁の天下り先である「くりっく365」を優遇するためとか・・・。

今後どうなるかは分かりませんが、誰も得しないレバレッジ規制については、我々トレーダーも声を上げて反対していく必要があると思います。

また、今後も引き続き「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」は開かれます。出席される「反対派」の方々にはぜひ頑張って頂きたいものです。

スノーキーさんの動画があります

第4回目までの有識者会議を傍聴されたスノーキーさんの考えをまとめた動画がYouTubeに上がっています。

非常に参考になりますのでぜひご覧ください。

 

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