
今回はFVG(フェアバリューギャップ)のエントリーについて、FVGに入ってきたところでエントリーするのか、それともFVGを埋めたところでエントリーするのか、どちらが良いのかについて検証した結果をまとめます。
SMCに関する情報を発信していると「ロングの場合、FVGの始点と終点、のどっちで入った方が良いんですか?」という質問をよく頂きます。
FVGの始点でエントリーする場合、その多くは実質的にOBでのエントリーになることも多くあります。
ではどちらが良いのか?
その疑問にこたえるべく、前回行ったBPRからの反転を狙ったエントリーの検証データを利用して比較してみました。
- 期待値重視ならFVG始点(オーダーブロック)エントリー
- 勝率重視・ストレス軽減ならFVG終点エントリー
- どちらが優れているかは「性格とリスク許容度」で変わる
なお、今回の記事は前回の記事の続きとなっています。
まだ読まれていない方は前回の記事からご覧ください。
手法や利食い・損切ルールによっては結果が大きく変わることもあると思いますので、あくまでも一例だとお考え下さい。
Contents
FVGでのエントリーについて
今回の検証におけるもっとも重要なFVG終点とFVG始点のエントリーポイントから解説します。
1.FVGの終点でエントリー
FVGの終点でのエントリーとは、反転しやすい価格帯に到達してから、FVGを伴う反転が生じた後にFVGの終点まで戻ってきたところでエントリーするやり方です。
以下がエントリーのモデルです。
ロングであればFVGの上限、ショートであれば下限になるのがポイントです。
このエントリーの場合、FVGにタッチしてすぐに反転した場合でもエントリーできるため、取りこぼしがないのが大きな利点です。
一方でエントリーから損切値までの距離が長くなりやすく、リスクリワードが大きく伸ばしにくいのがデメリットになります。
2.FVGの始点でエントリー
FVGの始点でのエントリーとは、反転しやすい価格帯に到達してから、FVGを伴う反転が生じた後にFVGの始点まで戻ってきたところでエントリーするやり方です。
ロングであればFVGの下限、ショートであれば上限になるのがポイントです。
FVGの始点でエントリーの場合、損切値まで引き付けてエントリーできますのでリスクリワードが大きくしやすくなるのが大きなメリットです。
一方で、FVGの始点にタッチせずに反転するケースもありますので、勝ちトレードを逃してしまう機会損失のリスクがあるのはデメリットです。
多くのケースでFVGの始点はオーダーブロックの価格帯になりますので、オーダーブロックでのエントリーとも解釈できます。
FVGエントリーとオーダーブロックエントリーの違いの比較
FVGとオーダーブロックのエントリーの違いについてまとめると以下のようになります。
FVGでのエントリー
- トレードチャンスが多く、勝率も高い
- 損切幅が広めでリスクリワードを上げにくい
- 早く動く相場に向いている
オーダーブロックでのエントリー
- トレードチャンスが少なくなり、勝率も下がる
- 損切幅が狭いためリスクリワードが大きく設定できる
- しっかりと戻ってくる相場に向いている
これらの理由から、勝率優先ならFVG、リスクリワード優先ならオーダーブロックでエントリーするのが望ましいと言えます。
ではどっちが優位性があるのか?
この点については、各手法に応じて検証していくしかありません。
ただし今回は私が以前検証したデータを利用してどちらのエントリーで優位性があるかを調査しました。
検証内容
今回の検証のベースとなるのは前回の記事でご紹介したBPRからの反発を狙う手法です。
前回の記事では、上位足で生じたBPRに入ったら下位足に切り替えて、下位足のFVGの終点でエントリーする手順で検証しました。
このエントリーはまさに典型的なFVGでのエントリーです。
では今回は同じ条件でオーダーブロック(FVGの始点)でエントリーしたらどうなるかについて検証して比較しました。
詳しい検証条件
- 検証期間:2025年1月~10月
- 検証通貨ペア:ユーロドル
- 検証時間足:1時間足と5分足
エントリールール
- 1時間足でBPRが生じてBPRまで戻ってきたら5分足に切り替える
- 5分足でFVGを伴う反発をする
- FVGに入ってきたところでエントリーする
損切は前回と同じく5分足のスイングの高値や安値に設定します。
利食いについて
利食いについては前回のFVGでエントリーした時と同じレートで行います。
FVGでエントリーした場合は損切幅の2倍になるところで利食いとしており、今回も同じところで利食うことになります。
そのため、今回の検証では少なくとも各トレードで2倍以上のリスクリワードになります。
エントリーしない場合
エントリー条件を満たした後に、価格がFVGに入ってくるも、オーダーブロック(FVG始点)でのエントリー注文にはヒットせずにそのまま利食いポイントに到達したらエントリー注文はキャンセルします。
これがFVGエントリーでは入れてもオーダーブロックエントリーでは入れないトレードです。
今回の検証では、この「見送りとなった勝ちトレード」がどれくらい多いかでトータルの結果が大きく変わることになります。
検証結果
FVG(FVGの終点)でエントリーした場合
まずはパフォーマンス分析です。
- トレード回数:85回
- 勝率:49.41%
- ショートの利益:2244.85ドル
- ロングの利益:1056.27ドル
- トータルの利益:3301.12ドル
- リターン:33.01%
- PF:1.54
これは前回の記事で出した結果と同じです。
FVGエントリーではしっかりと優位性があることが分かります。
オーダーブロック(FVG始点)でエントリーした場合
- トレード回数:72回
- 勝率:41.67%
- ショートの利益:2804.95ドル
- ロングの利益:1348.07ドル
- トータルの利益:4153.02ドル
- リターン:41.53%
- PF:1.63
トレード回数が大きく減り、勝率も下がりました。
これはFVGエントリーでは入れたけどオーダーブロックエントリーでは入れなかった「見送りとなった勝ちトレード」があったからです。
しかし、トータルの利益、リターン、PFを見ると、オーダーブロックでのエントリーの方が良くなっています。
FVGエントリー(FVG終点)とオーダーブロックエントリー(FVG始点)の比較
FVG | オーダーブロック | 差 | |
総利益 | 3301ドル | 4153ドル | +852ドル |
トレード回数 | 85回 | 72回 | −13回 |
勝率 | 49.4% | 41.6% | −7.8% |
PF | 1.54 | 1.63 | +0.09 |
結果を表にするとより分かりやすくなります。
今回はエントリーポイントだけを変えて検証しましたが、トータルの結果としてはオーダーブロックエントリー(FVG始点)の方がよくなりました。
この要因としてはリスクリワードが良くなったことが挙げられます。
オーダーブロックのエントリーは、FVGエントリーなら入れていた勝ちトレードを取りこぼすデメリットはありますが、リスクリワードの向上によってそれを上回る利益が得られたことになります。
ただし良いことばかりではなく、勝率が犠牲になっていますので、心理的負担は増えやすいと考えられます。
人によっては、この程度の期待値差であれば、勝率が高いFVGエントリーの方が長期的に継続しやすいと感じるかもしれません。
まとめ
今回の検証では、同一の手法・同一の条件下でFVGの終点でエントリーする場合と、FVGの始点(オーダーブロック)でエントリーする場合を比較しました。
その結果、勝率やトレード回数はFVG終点でのエントリーの方が高くなる一方で、トータルの利益、リターン、PFといった期待値の面では、FVG始点(オーダーブロック)でのエントリーの方が優れた結果となりました。
オーダーブロックでのエントリーは、FVGエントリーであれば取れていた勝ちトレードを見送ってしまうデメリットがありますが、損切幅を小さく抑えられるため、1トレードあたりのリスクリワードが改善し、結果としてトータルのパフォーマンスを押し上げたと考えられます。
一方で、勝率が下がるということは、連敗が発生しやすくなり、心理的なストレスが増えやすいという側面も無視できません。
そのため、
- 勝率を重視し、安定してトレードを続けたい場合はFVG終点でのエントリー
- 期待値やリスクリワードを重視し、多少の勝率低下を許容できる場合はFVG始点(オーダーブロック)でのエントリー
といったように、トレーダーの性格や許容できるストレスに応じて使い分けるのが現実的だと言えます。
今回の検証はあくまでユーロドル・特定期間・特定ルールに限定した一例に過ぎませんが、FVGの「どこで入るか」という違いが、勝率・トレード回数・期待値に大きな影響を与えることは、SMCを使ったトレードを考える上で重要なヒントになるはずです。
エントリーを考える際の参考にしていただければ幸いです。

































