金融先物業協会より2020年3月分の店頭FX月次速報が発表されました。
これで2019年度の国内店頭FXの総取引高が分かりましたので本記事でまとめます。
2019年度の国内FXの取引高は4266兆1414億円。
前年度比では525兆円増加(約14%増)となりました。
この4266兆1414億円の取引高とは、金融先物業協会に登録する国内FX業者の総取引高となります。
ほとんどのFX業者が金融先物取引業協会に登録していますので、この数字が国内FX業者の総取引高と考えて良いでしょう。
今回の記事では2019年度で取引高が増えた要因と今後について考察していきます。
Contents
年度単位の取引高の推移
まずは2009年度から2019年度までの国内FXの取引高の推移をご覧ください。
リーマンショック直後の2009年度から2012年度までは2000兆円程度の取引高でしたが、2013年度から一気に4000兆円台にのびました。
これは民主党から自民党に政権が変わり「アベノミクス」による期待てドル円相場が80円台から120円台まで上昇したことが大きな要因です。
この時期にFXを始めた方も多いのではないでしょうか?
しかし、取引高の上昇はドル円と同じく2015年度の5524兆円をピークにその後は下落。
2018年度は4000兆円をも下回りましたが、2019年度は何とか4000兆円台をキープしています。
月別の取引高の推移
では次に月別の取引高の推移をご覧ください。
2020年3月の取引高が圧倒的すぎます(笑)
なんとたった1ヵ月なのに取引高が1000兆円を超えています。
その要因はやはりコロナショック。
それまでドル円を始めとして、FX市場が長いこと停滞した相場が続いており、取引量自体も低下していました。
しかし、2020年3月はコロナショックでどの通貨ペアも大きく上下したため取引量が活発になったと考えられます。
また、2020年3月よりリモートワークを取り入れる会社が増えてきています。
自宅で過ごす時間が増えたり、先の見えない状態の中でもう一つの収益源を求めるためにFXを始めた人が多いことも取引量が増えた一つの要因でしょう。
2019年度は最後の最後で発生した「コロナショック」のおかげで取引高が4000兆円を超えられましたが、もしそれがなかった場合を考えると、明らかに前年度を下回っていたことになるでしょう。
通貨ペア別の取引高の推移
それでは最後に主要通貨ペア別の取引高の推移をご覧ください。
取引高が一気に伸びた2013年以降、ドル円の取引高が圧倒的過ぎます。
国内FXの総取引高のうち、毎年約6~7割がドル円の取引となっています。
ドル円は我々日本人にとって最も馴染みのある通貨ペアですし、流動性もあってスプレッドも狭いため人気が高いのは理解できます。
しかし、それでも少し偏りすぎかな?と感じます。
また、他の主要通貨ペアについて注目してみると、実はそれほど取引高が増えているわけではないことが分かります。つまり、ここ10年間でFXの取引高は増えたものの、そのほとんどがドル円の取引であることがグラフから明らかになりました。
今後のFX取引高は伸びる?伸びない?
2015年度をピークに徐々に取引高が減少している国内FXですが、今後はどうなるでしょうか?
上記のデーターを見る限り、ドル円に大きな動きがみられない限り、国内FXは取引高はジリ貧になっていくかと思います。
その理由は二つあります。
- トレーダーの飽和
- 海外FX業者の台頭
それぞれについて考察します。
FXトレーダーの飽和
2020年現在では、FXトレーダーの数は既に飽和していると考えられます。
1998年の金融ビッグバンの一環として始まったFX取引は、2000年代に大きく広まり、法整備や税制が整ってきた2010年代にその地位を不動のものとしました。
FXの知名度はかなり高まっている現状を考えると、FXの新規参入者とFXの脱落者の数は拮抗しているのではないでしょうか。
参考までに以下のグラフをご覧ください。
これは業界最大手であるGMOクリック証券のFXネオの取引高(赤い線グラフ)と口座数(青い棒グラフ)を示したグラフです。
口座数を示す青い棒グラフの推移に注目すると、なだらかに口座数が増えていることが分かります。これだけを見れば、トレーダー数が増えているようにも見えますが、実際にトレードされていない「休眠口座」を考慮すると、実質的なトレーダー数はそれほど増えていないか、むしろ減ってきていると考えられます。
そのため、これから為替市場が大きく注目されるようなイベントや動き、FXブームが来ない限り、FXトレーダーの数は増えないと予測できます。
海外FX業者の台頭
国内FX業者にとって大きなライバルとなっているのが海外FX業者です。
海外FX業者の存在は昔からありましたが、信頼性に問題がある業者が多く、出金拒否やレート操作などの噂が絶えず「危険」とみなされがちでした。
しかし現在では日本語に対応した信頼性のある業者が増え、「レバレッジ規制なし」「ゼロカットを採用」「NDD方式」など国内業者では不可能なサービスを展開することで、日本人のトレーダーの数を増やすことに成功しています。
世界のFXトレーダーの中でも日本人の割合は約6割と言われています。
海外FX業者にとって日本人トレーダーを顧客に持つことは非常に重要な経営戦略となっているのです。
具体的に海外業者の取引高がどれくらいになっているのかは不明ですが、おそらく国内業者も無視できないレベルの取引量になっていると予想できます。
国内FXは税制的に優遇され、スプレッドも狭いメリットがありますが、金商法によりゼロカットが採用できないのは非常に大きなデメリットです。
今後もFX業界が盛り上がってくれれば・・・
以上、2019年度の国内FXの取引高のまとめでした。
FXの取引高は、個人のトレーダーにとっては全く関係ないようにも思えるかもしれません。
しかし、取引高が少なくなれば業者の利益が減り、その分だけスプレッドが広がったり、サーバーやシステムへの投資が減ったり・・・と長期的に我々トレーダーも不利益を被ることになります。
なかなか大きな動きが発生しにくい昨今の外国為替市場ですが、再び大きく注目されることを期待しています。