最近、SMCを学んでいる方から色々とご質問を頂くようになりました。
その中でよく頂く質問が「Inducementって何ですか?」というもの。
当サイトでは、まだ一度も「Inducement(インデュースメント)」については言及していませんので、私からSMCを学んでいる方は初見だと思います。
YouTube等で独学で学んでいる方は「inducement」について見聞きしたことがあるとは思いますが、これが曖昧な解説が多くて少しわかりにくいのも事実です。
しかし、Inducementを知ることで、ダマシを避けてトータルの勝率を上げられるメリットがあります。
そこで今回はInducement(誘導)について出来るだけ分かりやすく解説しますので、ぜひご覧ください。
Contents
Liquidityについて
Inducementの解説の前に、おさらいとしてLiquidity(リクイディティ)について解説します。
Liquidityとは「流動性」の意味で、SMCにおいては沢山の注文(ストップロスや指値エントリー注文)が入っている価格帯のことを指します。
市場において沢山の注文の入っている価格帯(Liquidity)は、大きく動くために必要不可欠な「燃料」のような欠かせない存在です。
なぜなら、レートが流動性のある価格帯に到達することで、大量の取引が約定されて資金が市場に入ってくるからです。市場はお金が入ってくるからこそ変動するのです。
Liquidityの考え方
Liquidityの多い価格帯を判定する方法は色々とありますが、その中でもシンプルで分かりやすいのが特定のチャートパターンです。
例えば下の画像をご覧ください。
これは有名な「ダブルトップ」のチャートパターンです。
ダブルトップの2つの頂点の少し上のレートに「$$$」と記載しています。
これこそが沢山の注文が入っていること(Liquidity)を意味しています。
なぜなら、ダブルトップのすぐ上には、既にショートポジションを持っている人たちの損切り注文が沢山入っていると考えられるからです。
このように多くのLiquidityがあると考えられる価格帯を「Liquidity pool」と呼び、その中でも
- 特定の高値の上にあるLiquidity poolを「Buyside Liquidity」(上の画像)
- 特定の安値の下にあるLiquidity poolを「Sellside Liquidity」
と呼びます。
価格がLiquidity poolに到達すると、一気に注文が約定して瞬間的、もしくは永続的にブレイクしていくことになります。
このようにLiquidity Poolに価格が到達して、相場が動くことを「Liquidity Sweep、もしくは単にSweep」と呼びます。
目立った高値や安値に到達した瞬間の値動きを見ると、ティックの更新回数が飛躍的に高まり、価格の値動きも激しくなります。
Sweepによって多くの市場参加者のロスカット注文(買い注文)が発動して価格が上昇している中で、それを見計らってスマートマネーが本命のショートを仕掛けると「ダマシ」的な値動きになって、反転していきます。
あなたもこのような値動きを見たことがあるのではないでしょうか?
Liquidityの多い価格帯
Liquidityはどこにでも存在しますが、特に目立った高値や安値、多くのトレーダーが引く水平線やトレンドラインに多くあります。
再度書きますが、Liquidityには多くの損切り注文が入っています。
多くの損切り注文がある・・・ということは、スマートマネーにとっては、「ここまで価格を動かしてストップ狩りをすれば、多くの流動性が得られる価格帯に行ける」となります。
多くの流動性が得られたときに取引することで、自身のポジションでレートを動かしてしまって、不利なレートで約定することを防げます。
Inducementについて
Inducementとは「誘導」という意味になりますが、SMCにおいては「ダマシ」的な意味合いになります。
具体的には、スマートマネーが一般のトレーダーに仕掛ける罠のようなもので、特定の価格帯をサポレジだと判断してエントリーしても、すぐに逆行してダマシに合ってしまう価格帯のことを言います。
この図にもありますように、「Inducement」と記載した価格帯に一度戻ってから小反発後に、再度下にブレイクしています。
このInducementも、チャート上でよく見られる現象です。
Inducementのメカニズム
Inducementはスマートマネーが作り出す「ダマシ」です。
下の図にもあるように、オーダーブロック候補でスマートマネーが買いを入いれて「反発」を匂わせます。
これを見た他のトレーダーは「ここから上げそうだ!」と考えてロングを入れます。
ロングをした人たちは、直近の安値に損切りを置くことが多いのは言うまでもありません。
そして他のトレーダーの買いが追従した所で、今度は反対売買を行います。
すると、直近の安値付近のレートがLiquidity poolになっているため、ここを下にブレイクすると下げが加速します。
そして、真のオーダーブロックに到達した所で、スマートマネーが本命の買いを入れて、価格が大きく上昇します。
これがInducementのメカニズムです。
スマートマネーは、他のトレーダーを誘導して新規のポジションを取らせて、そのポジションを損切る方向にもっていくことで、新たに流動性を作り出しているわけです。
inducementとなりやすい価格帯
Inducementは「誘導」の意味の通り、トレードを誘導して新規にポジションを取らせてダマシに終わらせる価格帯のことです。
基本的にはオーダーブロック候補の価格帯や目立った高値・安値がInducementになることが多いですが、「どれがInducementになるか」については、事前に正確に当てるのは非常に難しいです。
LiquidityとInducementの明確な違い
LiquidityとInducementの違いについてまとめます。
- Liquidity:すでにポジションを持っているトレーダーを追い出す「ストップロスさせる」価格帯
- Inducement:新規にトレーダーをエントリーさせる価格帯
Liquidity poolについては、何度も反発している価格帯を探すことで比較的容易に見つけ出すことができますし、そこに到達したら何が起きるかも予測しやすいです。
しかしその一方でInducementは事前に明確に予測することは難しく、後になってわかることが多いです。
結果として「俺がエントリーしたのはInducementだったか・・・」と判断することになります。
スマートマネーは、これらを上手に利用することで価格を操作(manipulation)しているとされています。
もちろん、この説がどこまで本当で、どこまでがファンタジーなのかは分かりませんが、LiquidityとInducementの2つを頭に入れてチャートを分析することで、より勝率を上げられるのは間違いありません。
LiquidityとInducementの知識の活かし方
では最後にLiquidityとInducementの知識の活かし方についてチャートを用いて解説します。
これはドル円の15分足チャートです。
トレンド方向としては上昇トレンドで、チャート上にLiquidityのありそうなレートに点線と$$$を記載しています。
その後、価格は上の方へブレイクしました。
チャートを見ると、2つのLiquidityを1本のローソク足でsweepしています。
大量のロスカット注文が発動して上昇していると考えられます。
この時点では、今後どうなるかは分かりません。
ブレイクしていく可能性もありますし、ダマシなる可能性もあります。
しかし、新たに高値を更新していますので、それまでの安値が買いのオーダーブロックとして機能しそうです。
ここでは2つの価格帯がオーダーブロック候補になりました。
その後、価格は一気に下げてきました。
どうやらブレイクにはならずダマシになったようです。
現状ではOB1まで下げて反発してきています。
ここで押し目買いのロングをしても良いでしょう。
価格は少し反発を見せましたが、更に安値を割ってきました。
どうやらOB1の価格帯はInducementだったようです。
OB1で反発したことで、OB1の安値付近には多くの売り注文(買いの損切り注文)が入っていましたが、それが発動して今度はOB2にまで到達しました。
OB2の元となるローソク足の上は連続したFVGがあり、それを埋めてきていることにも気づきます。
- OB1がInducement
- OB2の上には目立ったFVGがあった
ということから、OB2が本命だったか!と推測することになります。
その後の値動きです。
しっかりと反発して上昇していきました。
もしOB1がInducementだったと判明した後にチャートを開いた場合、ここはかなり美味しいポイントだったと言えます。
まとめ
今回はInducementとLiquidityについて解説しました。
どちらともスマートマネーの動きを考える上で非常に重要な概念となります。
- Liquidityはどの辺にあるのか
- Sweep後はどんな動きをするか
- Inducementになりそうな価格はどこか
- Inducementの次のオーダーブロックではどんな反応をするか
といったことを頭に入れながらチャート分析をしていくと、よりSMCの上達が早くなると思います。
複雑になってはきますが、その分だけチャート分析の解像度は上がるはずです。
liquidityとinducementから本当に反発しやすいオーダーブロックを見極めるテクニックは以下の記事をご覧ください。