ブレイクアウトを狙う手法の中で有名なものとして、「前日の高値や安値をブレイクしたらエントリー」というルールがあります。
前日の高値や安値は当然わかっていますから、当日に事前に指値注文をしておくだけでOKという完全無裁量で超お手軽な手法です。
しかし、こんな簡単なやり方で勝てるのでしょうか?
古典的で知り尽くされていますし、だれでも実践できるようななやり方ですから、もう無理なのでしょうか?
そこで今回は前日の高値安値ブレイクについて検証してみました。
興味のある方はこちらの方もご覧ください。
類似のインジケーターを利用した動画もあります。
Contents
前日の高値安値ブレイク手法について
前日の高値安値ブレイクを狙う手法で必要な情報「前日の高値と安値」のみです。
しかし、これだけでは利食い条件等を設定しにくいので、以下の3つの情報を使うことにします。
- 前日の高値と安値のレート
- ADRの値
- フィボナッチ
ADRとはAverage Daily Rangeのことで、1日の平均の値幅を示します。
ATRと似ており、日足の値幅の平均値として求められます。
ADRを表示できるインジケーターは以下からご覧ください。
チャート設定方法及びラインの引き方
エントリー水準を決めるためにラインを引いていきます。
まずは、前日の高値と安値に水平線を引き、「高値+ADR」、「安値-ADR」のレートにも水平線を引きます。
「高値+ADR」と「安値-ADR」の値の意味合いとしては、「前日の高値や安値をブレイクしても、これまでのボラティリティからせいぜいこのレート(1日平均の値幅)くらいまでしか動かないんじゃないかな?」というレートです。
さらに、「前日高値+ADRと前日高値のゾーン」と「前日安値と前日安値-ADRのゾーン」にフィボナッチリトレイスメントを引きます。
これで準備完了です。
やっぱ専用のインジを使おう
ルールはシンプルであってもチャートの準備が面倒だと思いますので、全部を一括でやってくれるMT4インジケーターをご紹介します。
それが「Visual_Backtest_Guide – ADR breakout – FIB retracement」です。
このインジケーターを使えば、先ほど行ったチャートの設定を全部自動でやってくれます。
(+0.00%、-0.00%が前日の高値と安値、+100%が前日高値+ADR、-100%が前日安値-ADR、その間がフィボナッチです))
しかもそれだけではありません。
なんとこのインジは過去のチャートにエントリー&エグジットポイントを示し、トレードの統計まで出してくれるのです。(リアルタイムでもエントリーポイントを示してくれます)
統計表示の意味合いは以下の通りです。
詳細なトレード結果が表示されます。
しかも、エントリーポイントや利食いポイント、損切りレート、取引時間帯なども簡単に変更して検証できます。正に神インジです。
以下がパラメーター設定画面です。
今回はこのインジケーターを使って、検証していきます。
このインジが欲しい方は、以下のリンクをクリックしてダウンロードしてください。
全体の検証ルール
今回は複数の条件で検証しましたが、基本となる検証ルールは以下の通りです。
- 検証通貨ペア:ポンドドル
- 検証期間:2020年1月から2021年1月26日まで
- トレード時間:MT4時間(GMT+2)で3時~17時(日本時間で9時~24時)。この時間内にエントリーチャンスが来たらエントリー。17時を過ぎたらポジションを決済とする。
- 損切り幅は20pips固定
以上の条件は固定しつつ、以下の2つのエントリー条件それぞれについて利食いポイントを変化させてパフォーマンスの違いを確認しました。
- 前日の高値や安値にタッチした時点でエントリー
- フィボナッチ15%にタッチした時点でエントリー
通貨ペアをポンドドルにした理由は、前回タイムブレイクで検証した際に、高いパフォーマンスが確認できたからです。
ポンドはブレイクすると大きく動きやすいという考えから、今回ポンドドルで検証しました。
前日の高値や安値にタッチした時点でエントリー
前日の高値か安値にタッチしたらエントリー、決まったpipsで利食いのルールでの検証です。
検証ルール
前日の高値か安値にタッチした時点で順張りエントリーします。
トレードはほとんどのケースで1日1回ですが、場合によっては高値タッチでエントリー⇒損切り⇒安値タッチでエントリーとなる日もあります。
この条件で更に以下の利食いルールで検証しました。
- 利食い20pips、損切り20pipsのリスクリワード1.0ルール
- 利食い30pips、損切り20pipsのリスクリワード1.5ルール
- 利食い40pips、損切り20pipsのリスクリワード2.0ルール
- 利食い50pips、損切り20pipsのリスクリワード2.5ルール
シンプルにも程がありすぎるレベルのルールです。
検証結果
検証結果はそれぞれ以下の通りとなりました。
条件 | トータル(pips) | 勝率(%) |
---|---|---|
リスクリワード1.0 | 579.6 | 56.6 |
リスクリワード1.5 | 906.0 | 49.1 |
リスクリワード2.0 | 777.8 | 42.0 |
リスクリワード2.5 | 809.3 | 38.4 |
前日の高値か安値にタッチしたら順張りエントリーするだけで勝てます!
特に凄いのが損切り-20、利食いを30にしたリスクリワード1.5です。
この条件だと勝率が約5割なのにリスクリワードが1.5と素晴らしい結果になっています。
この表を見れば、前日の高値や安値をブレイクしたらエントリーするだけでも優位性が得られることが分かりますね。
フィボナッチ15%にタッチした時点でエントリー
前日の高値や安値タッチでのエントリーは、エントリー後にすぐに反転して損切りに合うケースが多かったため、「前日の高値より少し上」「前日の安値よりも少し下」のレートでエントリーしたらどうだろうか?と考えて、エントリー条件を変更しました。
検証ルール
前日高値より少し上のフィボナッチ15%、もしくは前日安値より少し下のフィボナッチ15%にタッチしたらエントリーします。
この条件で更に以下の利食いルールで検証しました。
- 利食い23.6%のライン、損切り20pips
- 利食い38.2%のライン、損切り20pips
- 利食い50.0%のライン、損切り20pips
- 利食い61.8%のライン、損切り20pips
ADRとフィボナッチを組み合わせることで、更にパフォーマンスアップを狙えないか?という目論見です。
ルールが少し複雑になると精度は上がるのでしょうか?
検証結果
検証結果はそれぞれ以下の通りとなりました。
条件 | トータル(pips) | 勝率(%) |
---|---|---|
利食い23.6% | 301.3 | 71.9 |
利食い38.2% | 597.9 | 50.6 |
利食い50.0% | 564.0 | 41.3 |
利食い61.8% | 850.3 | 40.1 |
エントリーポイントを前日高値より少し上、もしくは前日安値よりも少し下に変更しても手法に優位性があることは変わりません。
ただ、パフォーマンス自体は前日高値や安値にタッチした時点でエントリーと違いは無いというか、むしろ微妙に劣っている感もありますね。
ADRやフィボナッチ無しでも十分勝てそうです。
前日の高値安値ブレイクを舐めてはいけない
今回は前日の高値安値ブレイクの手法について検証しました。
ポンドドルでは予想外に素晴らしい検証結果が得られて私も驚いています。
この手法では完全無裁量で事前にエントリーレートと利食い・損切りレートが分かっているため、イフダンOCO注文が可能です。どんなに忙しい人でも実践できるのが一番のメリットだと思います。
利すリワード比率によっては勝率が低くなったり、1年間分のトレード結果と考えると獲得pips数は少なめではありますが、労力の少ない手法として優秀です。
既に自分のトレード手法を持っている人も、まだ持っていない人も試してみてはいかがでしょうか。
相場に対する知見を増やす意味でもぜひ使ってみることをお勧めします。