
今回はアジアレンジブレイクの手法にICT Power of Threeの考えを加えて検証した結果を報告します。
アジアレンジブレイクとはアジア時間の高値や安値をブレイクしたところで仕掛ける極めてシンプルなブレイクアウト手法の一つです。
しかし、シンプルかつブレイク狙いということで、勝率は決して高くはありません。
そこれで、Power of Threeの考えを組み入れることで「エントリーをより厳選して勝率が上げられるのでは?」と思って検証してみました。
結論としては今一つでした・・・・。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
Contents
アジアレンジブレイクとは
アジアレンジブレイクとは、その名前の通りアジア時間にできた高値や安値をブレイクしたところで仕掛ける手法です。
アジア時間は基本的にはレンジ相場となりやすく、その後に続くロンドン→ニューヨーク時間の値動きでブレイクしていくことがほとんどです。(アジア時間に大きく動いた日を除いて)
この特性を利用して、アジア時間のレンジをブレイクしたタイミングで仕掛けるのがアジアレンジブレイクです。
場合によっては大きく取れるのも魅力です。
ICT POWER of Threeとは
ICT Power of Threeは、相場の値動き方を大まかに3つの順番に示したもので、以下の3つのフェイズがあります。
- Accumulation(アキュムレーション):レンジ、liquidityの蓄積
- Manipulation (マニピュレーション):スマートマネーによるストップ狩り
- Distribution(ディストリビューション):真の方向への動き
以下は上昇した1日の値動きのモデルです。
流れとしては、市場開始からしばらくは明確なトレンドの無いレンジ(Accumulation)が続きます。
レンジが続くとその上下に多くの注文(Liquidity)が集まります。
十分にLiquidityが集まったところで、スマートマネーがレンジの下限をブレイクさせて損切り注文を誘発します(Manipulation)。
レンジの下限を割って売り注文が殺到している時にスマートマネーが大量の買い注文を入れると、反発して上昇し、本来のトレンド方向であった上方向へ向かいます(Distribution)。
簡単に言うと、「レンジを作って、どちらかにブレイクブレイクしたと見せかけて、逆方向に大きく進む」という流れです。
これを考えると、レンジからの最初のブレイクはダマシで、その後に逆方向へブレイクしてきたらエントリーする方が勝てるように思えます。
実際にこのような値動きを見たことがある方も多いのではないでしょうか?
アジアレンジブレイクとPower of Threeを組み合わせる
Power of Threeの流れで考えると、アジアレンジの時間帯は1日の値動きの中でAccumulationに該当します。
そこで、アジア時間以降に、最初にレンジをブレイクした方向へのエントリーは見送り、その後、逆方向にブレイクしたタイミングで仕掛けると高期待値のエントリーになるのでは?という発想が出てきます。
この仮説について、本当のところはどうなのか?について私なりのルールを作って検証しました。
アジアレンジブレイク⁺Power of Threeの検証ルールについて
検証で使うインジケーター
今回はMT4用のインジケーターでタイムレンジブレイクのサインと統計まで出してくれる「Timezone_Breakout_wMinute_visual_entry_tp_sl」を利用して検証しました。
このインジケーターでは指定した時間帯の値幅をブレイクしたらサインが出現し、指定した利食い・損切ターゲットに到達したポイントまでラインが引かれて損益のpips数が表示されます。
更にはチャートの右下には、これまでのサインの統計(勝率、獲得pipsなど)を表示しますので、EAを使わなくても簡単に無裁量の検証ができます。
エントリー&決済ルール
検証のエントリー&決済ルールは以下の通りです。
- アジア時間終了後、最初のレンジブレイクがダマシとなる
- その後、レンジの逆方向にブレイクしたらエントリー
最初のレンジブレイクのダマシの定義は、ブレイク後にレンジの値幅の半分だけ順行する前に、レンジの半分のレートまで戻ってきた場合とします。
最初のレンジブレイクがダマシではなかった場合(レンジの半分の値幅まで順行した場合)は、その後、逆方向へブレイクしてもエントリーはしません。
エントリー後、利食いはレンジ幅の半分進んだところで行い、損切はレンジの半分まで戻ってきたところで行います(リスクリワード1:1)
この厳選したエントリー条件と、すべてのブレイクアウトでエントリーした条件での結果を比較して、どのような違いがあるかを調査します。
その他の検証条件
その他の検証条件は以下の通りです。
- 検証期間:2024年10月28日~2025年3月28日(ヨーロッパの冬時間開始から終了まで)
- アジアレンジの時間帯:日本時間10時~15時まで
- 検証通貨ペア:ドル円、ユーロドル、ポンドドル、ゴールド(XAUUDS)
アジアレンジの時間帯を10時から15時までにした理由は、この時間帯が一番効果が高かったからです。
時間帯が1時間前後にずれたり、1時間長くなるだけでも結構違いが生じました。
検証結果
検証結果は以下の通りです。
通貨ペア名 | 通常のブレイクアウトルール(RR 1:1) | Power of Threeのルール(RR 1:1) | ||||
pips | 勝率 | エントリー回数 | pips | 勝率 | エントリー回数 | |
USDJPY | -315.0pips | 49.7% | 157回 | -77.7pips | 56.8% | 37回 |
EURUSD | 293.0pips | 59.4% | 172回 | 86.5pips | 63.9% | 36回 |
GBPUSD | 25.6pips | 49.7% | 173回 | 20.5pips | 51.4% | 36回 |
XAUUSD | 1470.8pips | 55.1% | 147回 | -381.8pips | 42.3% | 26回 |
まず左側の通常のブレイクアウトルールは、アジアレンジをブレイクしてサインが出た箇所すべての統計になります。
獲得pipsにバラツキはありますが、リスクリワードが1:1ですので、トレードのリスク金額を一定にした場合で重要になるのが勝率です。
これを見ると好調なのがユーロドルとゴールドで、それ以外は負け越しです。
pips自体は大幅にプラスではあるものの、リスクリワード1:1の観点で見ると、決して良いパフォーマンスではありません。
そして右側が今回のPower of Threeでの結果です。
エントリー回数が激減してはいますが、ゴールドを除けば勝率が向上しています。
特にドル円は勝率が約7%も向上しています。
しかしその一方でユーロドルやポンドドルについては、勝率の上昇幅はそれほど大きくはありません。
全体を総合してみると、正直なところアジアレンジとPower of Threeを組み合わせても、エントリー回数が激減する割には大した効果は得られない、という結論至りました。
リスクリワードを2にしてみる
アジアレンジとPower of Threeの組み合わせが意外にもイマイチだった結果を見て少しショックを受けましたが、「それは単にリスクリワードが小さすぎるからだ!」と考えました。
そもそもPower of Threeのモデルでは、最初のブレイクがダマシなら、次の逆方向のブレイクは大きく進むことになっています。
そこで、利食いターゲットをアジアレンジの値幅分だけ進んだところに設定して、あとは同じ条件で再検証しました。(損切ルールはアジアレンジの半値のポイントです。)
エントリーのモデルは以下のようになります。
この通りに動いた値動き例は以下になります。
これなら取りこぼしが無くなって、多少勝率は下がったとしてもトータルではいい結果になりそうです。
リスクリワード2の結果
ではリスクリワードを2にした結果が以下になります。
通貨ペア名 | Power of Threeのルール(RR 1:1) | Power of Threeのルール(RR 1:2) | ||||
pips | 勝率 | エントリー回数 | pips | 勝率 | エントリー回数 | |
USDJPY | -77.7pips | 56.8% | 37回 | -91.7pips | 37.8% | 37回 |
EURUSD | 86.5pips | 63.9% | 36回 | 50.9pips | 38.9% | 36回 |
GBPUSD | 20.5pips | 51.4% | 36回 | 22.1pips | 38.9% | 36回 |
XAUUSD | -381.8pips | 42.3% | 26回 | -593.0pips | 26.9% | 26回 |
左側が先ほど出したリスクリワード1.0で、右側が今回のリスクリワード2.0のルールです。
両者を比較すると獲得pips数ではリスクリワード1.0の方が優れています。
勝率を見ると、リスクリワード2の方が下がっていますが、こちらん方はリスクに対してリワードが2倍ですので下がっていて当然です。
では、両者において1回のトレードのリスクが1万円となるようにロット調整した場合の期待値を求めると以下のようになりました。
通貨ペア名 | Power of Three(RR 1:1) | Power of Three(RR 1:2) |
USDJPY | 1360円 | 1340円 |
EURUSD | 2780円 | 1670円 |
GBPUSD | 280円 | 1670円 |
XAUUSD | −1540円 | -1930円 |
ポンドドル以外はリスクリワードを上げると期待値が下がる結果に・・・。
残念ながら仮説通りにはなりませんでした。
考察
今回はアジアレンジブレイクとPower of Threeを組み合わせた手法について検証しました。
結論としては、期待したような結果は得られませんでした。
通常のアジアレンジブレイクと比較しても目立った優位性が得られたわけでもなく、リスクリワードを大きくしても期待値は悪化・・・と非常に残念な結果でした。
仮説とは違った原因としては以下のものが考えられます
- そもそもPower of Three通りの動きをすることが少ない
- エントリー条件が悪い
- レンジではないアジア時間も入っている
- トレンド方向を無視している
そもそもPower of Three通りの動きをすることが少ない
Power of Threeはとても納得できる理論ではありますが、このような理想的な動きをすることは決して多くはありません。
現実としては、以下のように最初のレンジブレイクが本当のブレイクだったケースの方が、Power of Three以上に多く発生しています。
このような事実を考えると、Power of Threeはより厳選された条件下で発生しやすいといえるでしょう。
エントリー条件が悪い
検証の条件として、1回目のブレイクがダマシだったと判断する条件や損切ポイントなどを決めていますが、これらが合わなかった可能性もあります。
レンジではないアジア時間も入っている
基本的にアジアレンジブレイクが効果的なのは、アジア時間が横ばいの動きだった時に限ります。
今回はツールを使って機械的に検証しましたので、アジア時間で大きく動いた時も混じっています。このような時を除外することで結果は変わる可能性があります。
トレンド方向を無視している
今回は大きなトレンド方向は一切無視して、アジア時間の値幅に対して機械的なルールで検証しています。
そのため、場合によっては大きな流れに反するエントリーがあった可能性もあります。
まとめ
アジアレンジとPower of Threeの組み合わせの手法について検証しました。
残念ながら理想通りとはなりませんでした。
今回はあくまでも機械的にやることを前提に検証しましたので、アジア時間のレンジや最初のブレイクのダマシの判定などについて裁量判断を加えてやることで、結果は変わるかもしれません。
しかし実際に検証して感じたのは「思ったほど理想的な動きになることは少ないなぁ・・・」でした。
もっと条件を厳選すれば期待値を高めることはできますが、理想となる頻度が少ないため、わざわざこれに特化する必要性も感じないのが正直なところです。