ちょっとショートしてみよう。
こんなことをやって損切りした経験はないでしょうか?
陽線や陰線が連続すると、「そろそろ逆向きの足が出るんじゃないかな?」という気持ちが生まれがちですよね。
これは単に感覚的な話なのでしょうか?
それとも本当に陽線や陰線が連続すると、その分だけ逆線が出る可能性が上がるのでしょうか?
今回の記事では、ローソク足の陽線もしくは陰線が何本も連続して出現すると、その分だけ逆線が出る確率が上昇するのか?について検証します。
かなり大がかりな検証になりましたが、非常に興味深い結論が得られました。
きっかけはバイナリーオプション用の有料インジ
先日、海外のFXに関するサイトを漁っていると、バイナリーオプション用の有料サイン型インジを販売するサイトを見つけました。
そこで販売されているサイン型インジの一つのロジックに、ローソク足の陽線もしくは陰線が連続して出現したら逆張りのサインが出るというもがありました。
例えば、陰線が5本連続して出現したら買いエントリーのサインが出る・・・といった設定ができるものになります。
商材の販売ページ内の解説を見ると、5本以上連続で陽線が出現すると、その分だけ次の足では陰線が出やすくなる(5本以上連続で陰線が出現すれば、その分だけ次の足では陽線が出やすくなる)と書かれていました。
確かに言われてみると説得力があるような気もするのですが、「本当かなぁ?」という経験則からの疑問も沸いてきたので、実際に類似のインジケーターを自作して、検証しました。
今回の検証における二つの仮説
相場全体の統計を測ると、陽線と陰線の出現率は、ほぼ50%です。
そんな中で、陽線が5本連続して出現したら、次の足が陰線となる可能性が5割よりも飛躍的に上がるのでしょうか?
この疑問に対しては2つの考えがあります。
- 陽線や陰線が連続するほど次の足で逆線が出やすくなる
- 陽線や陰線がいくら連続しようとも、次の足が逆線になる確率は50%で変わりない
それぞれにいて見ていきましょう
1.陽線や陰線が連続するほど次の足で逆線が出やすくなる
- 陽線が続けば売りたい人たちが出てくる。
- 陰線が続けば買いたい人たちが出てくる。
投資家心理を考えれば、当然逆線が出る可能性が高まるに違いない!という考えです。
そもそも陽線と陰線の出現率が5割であるならば、それだけ陽線だけ、もしくは陰線だけが連続すれば、「平均回帰」として逆線が出やすくなるのは当然!とも考えることができます。
2.陽線や陰線がいくら連続しようとも、次の足が逆線になる確率は50%で変わらない
相場の動きはランダムに近いものがあるから、統計を取ればどんな時でも次に陽線や陰線が出る可能性は5割だ、という考えです。
陽線や陰線が連続するほど逆線が出る可能性が上がるなんていう主張は「ギャンブラーの誤謬に過ぎない!」と言っていいでしょう。
ギャンブラーの誤謬については、以下の記事をご覧ください。
検証内容について
■検証の目的
陽線もしくは陰線が5本連続した場合、6本目の足が逆線となる確率はいくらになるのか?を求めたい。
また、併せて陽線や陰線が6本~10本連続して出現した場合、次の足が逆線となる確率はどうなるのかも知りたい。
■検証方法
ローソク足の陽線や陰線が5本~10本連続して確定したらサインが出るインジを作成し、サインの出た次の足が逆線となる確率をバイナリーオプション用のシグナル判定ツールを利用して求める。
■検証通貨ペア
ドル円、ユーロドル、ユーロ円、ポンドドル、ポンド円
■検証時間足
各通貨ペアの1分足、5分足、15分足、30分足、1時間足、4時間足、日足
合計86万本以上のローソク足で検証する。
検証結果
結論は以下の通りです。
5本連続で陽線や陰線が出現後、6本目が逆線となる確率
5本連続で陽線や陰線が出現して、6本目が逆線になる確率は以下の通りです。
(数字の単位は%になります。)
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 48 | 53 | 55 | 56 | 51 | 48 | 53 |
ユーロドル | 48 | 52 | 53 | 55 | 59 | 50 | 55 |
ユーロ円 | 50 | 54 | 49 | 54 | 55 | 49 | 56 |
ポンドドル | 48 | 50 | 51 | 53 | 53 | 51 | 52 |
ポンド円 | 50 | 53 | 56 | 55 | 51 | 50 | 46 |
時間足や通貨ペアによっては逆線の出現率の上がるケースもありますが、総じて50%に近い値になっています。
ザッと見ると「ちょっと5割より大きな数字が目立つかな?」という印象ではありますが、陽線や陰線が5本連続しても、6本目が逆線になる可能性が飛躍的に上がるというわけではないことが分かります。
上記の通貨ペアと時間足の検証を総合すると、5本連続で陽線や陰線が連続したのは22561回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この22561回のうち、逆線が出たのは11650回でトータルでの確率は51.64%となりました。
6連続で陽線や陰線が出現後、7本目が逆線となる確率
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 52 | 51 | 51 | 57 | 54 | 50 | 50 |
ユーロドル | 47 | 52 | 56 | 54 | 53 | 57 | 62 |
ユーロ円 | 49 | 53 | 54 | 56 | 50 | 49 | 52 |
ポンドドル | 49 | 53 | 54 | 56 | 50 | 49 | 52 |
ポンド円 | 55 | 57 | 56 | 66 | 49 | 53 | 59 |
見た感じでは「5本連続で陽線や陰線が出現後、6本目が逆線となる確率」と大した違いはありません。
上記の通貨ペアと時間足の検証では、6本連続で陽線や陰線が連続したのは10416回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この10416回のうち、逆線が出たのは5477回でトータルでの確率は52.58%となりました。
7本連続で陽線や陰線が出現後、8本目が逆線となる確率
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 47 | 50 | 57 | 49 | 53 | 40 | 52 |
ユーロドル | 44 | 54 | 40 | 55 | 54 | 58 | 57 |
ユーロ円 | 51 | 61 | 48 | 51 | 62 | 44 | 62 |
ポンドドル | 53 | 51 | 54 | 47 | 46 | 50 | 55 |
ポンド円 | 47 | 50 | 57 | 49 | 53 | 40 | 52 |
これも5本連続や6本連続とそれほど大きな違いはありません。
ただ、ユーロ円との相性は良いようで、5分足、1時間足、日足では6割を超えています。
上記の通貨ペアと時間足の検証では、7本連続で陽線や陰線が連続したのは4732回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この4732回のうち、逆線が出たのは2374回でトータルでの確率は50.20%となりました。
8本連続で陽線や陰線が出現後、9本目が逆線となる確率
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 49 | 59 | 48 | 48 | 42 | 49 | 57 |
ユーロドル | 50 | 56 | 58 | 43 | 61 | 48 | 66 |
ユーロ円 | 51 | 58 | 38 | 47 | 53 | 50 | 62 |
ポンドドル | 49 | 54 | 47 | 53 | 53 | 49 | 40 |
ポンド円 | 49 | 57 | 68 | 62 | 45 | 63 | 40 |
ここ辺りから各時間足・通貨ペアごとのバラツキが大きくなってきます。
その理由は、8本も陽線や陰線が連続する頻度がかなり少なくなるからです。
上記の通貨ペアと時間足の検証では、8本連続で陽線や陰線が連続したのは2152回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この2152回のうち、逆線が出たのは1122回でトータルでの確率は52.14%となりました。
9本連続で陽線や陰線が出現後、10本目が逆線となる確率
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 51 | 61 | 42 | 80 | 42 | 50 | 63 |
ユーロドル | 46 | 50 | 75 | 40 | 43 | 47 | 57 |
ユーロ円 | 59 | 52 | 61 | 70 | 51 | 50 | 66 |
ポンドドル | 48 | 51 | 66 | 60 | 51 | 50 | 66 |
ポンド円 | 63 | 66 | 60 | 75 | 51 | 50 | 59 |
全体的に見ると、それまでと比べて明らかに逆線が出現する確率が上がっています。
上記の通貨ペアと時間足の検証では、9本連続で陽線や陰線が連続したのは1008回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この1008回のうち、逆線が出たのは567回でトータルでの確率は56.63%となりました。
10本連続で陽線や陰線が出現後、11本目が逆線となる確率
1分足 | 5分足 | 15分足 | 30分足 | 1時間足 | 4時間足 | 日足 | |
ドル円 | 44 | 60 | 85 | 50 | 63 | 58 | 33 |
ユーロドル | 36 | 66 | 50 | 66 | 50 | 60 | 100 |
ユーロ円 | 43 | 81 | 20 | 25 | 71 | 31 | 40 |
ポンドドル | 51 | 57 | 71 | 37 | 50 | 46 | 60 |
ポンド円 | 51 | 66 | 25 | 0 | 61 | 76 | 57 |
10本連続で陽線や陰線が出る事は非常に稀です。
そのため、場合によっては逆線の出現率が0%だったり、逆に100%と更にバラツキが激しくなっています。
上記の通貨ペアと時間足の検証では、10本連続で陽線や陰線が連続したのは407回ありました。(検証で使用した全ローソク足の本数は865364本)
この407回のうち、逆線が出たのは213回でトータルでの確率は52.33%となりました。
5本~10本陽線や陰線が連続した後に逆線が出る確率のまとめと考察
では最後に、今回の検証で使用した86万本以上のローソク足を使った検証から得られたデータのグラフです。
このグラフを見ると、9本連続で陽線や陰線が出現した後、10本目に逆線となる確率が一番高くなってはいますが、それでもせいぜい56%です。
また、陽線や陰線が連続するほど逆線の出現率が上がっていくわけででもありません。
そしてもう一点興味深い点がありました。
それがオレンジ色の棒グラフの発生頻度の推移です。
ローソク足が5本連続するよりも6本、7本・・・と連続するほうが発生頻度は下がるのは当然です。
この発生頻度の比率を見てみると
- 6本連続した際の発生頻度は5本の発生頻度の46%
- 7本連続した際の発生頻度は6本の発生頻度の45%
- 8本連続した際の発生頻度は7本の発生頻度の45%
となっており、陽線や陰線が1本多く連続する度に、その発生頻度は45%程度ずつ下がることが分かりました。
この分布も一種のべき乗則であることが分かります。
まとめ
今回の検証から以下のことが分かりました。
- 陽線や陰線が何本連続しても、次の足が陽線か陰線になるかの確率は5割程度
- 陽線や陰線が連続したからといって次に逆線が出る可能性が大きく上がるわけではない
- 陽線や陰線が連続する発生頻度は、べき乗則に従う
結論としては、私が見かけたバイナリーオプション用のサインツールは、全くといっていいほど優位性が無いものでした。
そして、「陽線や陰線が連続するほど次の足で逆線が出現する確率が高まる」という考えは、ギャンブラーの誤謬に過ぎなかったことも明らかになりました。
感覚的には正しそうに見えても、実際に検証すると全く優位性の無い事が市場には沢山あります。今回の検証は私にとっても非常に勉強になりました。
今後のトレードの参考にして頂ければ幸いです。