とんでもないニュースが入ってきました。
何と、金融庁がFXの更なるレバレッジ規制を検討しているそうなのです!
金融庁は外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った。現行の最大25倍から10倍程度に下げる案が有力。外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断した。国内取引高は約5千兆円に上る。規制見直しで日本発の市場混乱を防ぐ。
金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を開始。早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がある。
ソース:日本経済新聞
国内FXも元々はレバレッジ規制はありませんでした。
かつては400倍や200倍のレバレッジでのトレードが可能だったのです。
しかし、2008年のリーマンショック以降の急激なボラティリティの拡大により大きな損失を出す人が増えました。これを重く見た金融庁はレバレッジを規制し2010年8月より最大レバレッジが50倍、2011年8月より25倍にまで下げられました。
私の記憶だと、最初にレバレッジ規制が入った際は、「無謀すぎるトレードをする人が減る」という事で比較的レバレッジ規制について肯定的な意見もあったかと思います。
しかし、現在の25倍から10倍に減らすのはいかがなものでしょうか?
私はこれ以上レバレッジ規制を入れる必要ないと思います。
FXのレバレッジ規制に反対なのは、25倍を10倍に引き下げても「想定を超える損失」は発生するだろうから。
未収金(元本を超える想定外の損失)が発生するのは、瞬間的な急落によりロスカットが適切に執行されなかった時です。レバ規制よりもロスカットの適切な執行を先行すべきと思います pic.twitter.com/WLGuiC10z0
— 高城泰 (@takagifx) 2017年9月27日
高城泰さんのツイートにもある通り、金融庁はレバレッジ規制よりもFX業者にしっかりとロスカットをさせるように指導するべきです。
スイスフランショック時には強制的にロスカットをするどころかレート配信すら止まった業者もありました。まずはここを徹底させなくてはいけません。
また、可能ならば金商法の39条を改訂して、ゼロカットシステムを導入すべきです。
なぜ日本ではゼロカットシステムが使えないかは以下の記事で解説しています。
https://fx-winwin.com/zerocut
更なるレバレッジ規制が入るとどうなる?
現状ではレバレッジが本当に最大10倍になるかどうかは分かりませんが、本当にレバレッジが10倍になったらどうなるかを考えてみました。
国内FXの取引高が一気に下がる
日経の記事にもありましたが、日本国内のFX取引高は年間で約5千兆円になります。
取引高はレバレッジ規制で25倍まで下がった2011年には少し下がりましたが、それ以降はアベノミクスによる円安の動きもあって取引高は大きく上昇しました。
ピークは2015年。
2016年は少し取引高は減少し、2017年は更に減少しているようです。
しかし、過去と比較すればまだ高い水準にあるのですが、レバレッジが10倍ともなれば、取引高は一気に減少するでしょう。
その理由は単純にトレーダーの取引できる額が減ってしまう事と、トレーダーが他の金融商品に移ってしまう事。最近ではビットコインを始めとした仮想通貨も人気ですから、そちらに本格的に移行するトレーダーも増えるはずです。
また、レバレッジ規制の無い海外FXで取引を始める人も増えるでしょう。
海外FXでの利益は雑所得(累進課税)で、国内FXは申告分離課税(一律20%)という事で、現状では国内FXで取引をした方が税金も安くてメリットのある人も多いかもしれません。
しかし、国内FXのレバレッジが10倍になれば、国内FXの優遇された税制以上に海外FXのレバレッジ規制なしの方が魅力的に移る人が増えるはずです。
外国為替証拠金の取引高は、日本が世界一です。
海外FX業者は沢山トレードをする日本人の顧客が欲しくてたまりませんから、今回のレバレッジ規制を歓迎しているかもしれませんね。
国内FX業者が大打撃
国内FXの取引高が減少すれば、FX業者は大打撃となります。
FX業者は顧客に沢山の金額でトレードしてもらってナンボですので。
FX業者が利益を出す仕組みは以下の記事をご覧ください。
FX業者はこれまでにスプレッド競争やツールの強化などで顧客を奪い合い、弱い業者は大きな業者に吸収される流れが続いて来ました。
もしここからレバレッジが10倍になれば、トレーダーが他の金融商品に流れたり、海外FXに移ったりして取引高が激減して、競争が更に激化することでしょう。
場合によっては有名な業者も他の業者に吸収されるかもしれません。
競争が激しくなり過ぎれば、コストカットの末にサービスやシステムの質が低下したり、スプレッドが広がったりして、我々トレーダーにしわ寄せが来ることも否定できません。
レバレッジ10倍で喜ぶのは海外業者と株式メインの証券会社か
以上、新たなるレバレッジ規制について私の考えをまとめました。
「金融庁は本当に考えているのか?」
と思わざるを得ない規制です。
FX業者にロスカットの執行を促すことや、ゼロカットシステムを導入させるなど、まだ先にやるべきことがあるはずなのに、レバレッジ規制をするのは安直すぎる考えだと思います。
この規制で大喜びなのは日本の金融庁の指導を受けない海外業者です。
国内のFX業者もトレーダーも得をしません。
金融庁は常々海外FX業者を目の敵にしてネガティブキャンペーンをしてきましたが、今回の件については敵に塩を送っているようにしか思えません。
あと得をするとすれば、FXではなく株式メインの証券会社でしょうか。
国は日本人に株式投資をさせて株価を上げたいと目論んでいます。
NISA、ジュニアNISA、つみたてNISA等もそのもくろみの一環です。
そんな人たちからすると、FXの魅力を減らすことで、FXトレーダーたちを何とか株式取引の方に引っ張ってきたいのかもしれません。
今回のレバレッジ規制にはこんな思惑が見え隠れします。