
前回の記事に引き続き、FX業者についてのお話をさせて頂きます。
前回の記事で、海外業者を使うなら以下の条件を満たしているところが良いと書きました。
1.取引がNDD方式
2.ゼロカットシステムを導入している
さて、日本の業者について考えてみると、NDD方式を採用する業者は少しはあるのですが、ゼロカットシステムを採用しているところは皆無です。
1と2の両方を兼ね揃えた国内業者があれば・・・と考える人は少なくないでしょう。
今回の記事では、なぜ国内業者ではDD方式(相対取引、OTC取引)がメインでゼロカットシステムを取り入れないのかについてその理由を考えていきたいと思います。
Contents
NDDとDD、ゼロカットについてのおさらい
まずはこの記事でのキーワードとなるNDD、DD、ゼロカットについて簡単にご説明していきます。
NDD方式について
NDD(ノンディーリングデスク)方式とは、顧客の注文を全てインターバンクに流すシステムです。
NDDを採用する業者は顧客の注文を流すだけになりますから、インターバンクのスプレッドに加えて取引手数料を取るところが多いですね。
NDDの大きなメリットは何と言っても価格レートの透明性にあります。
後述するDDと違って業者と顧客の間に利益相反がありません。
そのため顧客にトレードをしてもらう事で利益を出すビジネスとなりますから、例えば業者によるストップ狩りや酷いスリッページなど、顧客に対して不利になるレートを提示することは基本的にありません。
DD方式について(国内業者で多く普及
DD(ディーリングデスク)方式(別名相対取引、OTC取引)はNDDとは異なり、顧客の注文すべてをインターバンクには流しません。
業者内のディーラーが顧客の注文状況から社内全体のポジションを見て、必要であればインターバンクに注文を流す、と言うスタイルになります。(ディーラーのいるディーリングデスクがあるからDD方式と呼ばれます。)
業者の中には一切顧客の注文をインターバンクに流さないところもあり、この場合では完全に顧客VS業者の戦いになりますので利益相反になります。(いわゆるノミ業者です)
また、業者内のディーラーは顧客のストップ注文等が集中しているレートが分かるため、無理矢理レートを操作して顧客のストップ注文を約定させる「ストップ狩り」が横行した時期も昔はありました。
しかし、DD方式のすべてが悪いというわけではなく、低スプレッドで取引手数料がゼロという恩恵を受けられることを忘れてはいけません。
DD方式の業者が手数料を取らずにどうやって利益を出しているかについては当ブログでも以前解説しましたので合わせてご覧ください。
ゼロカットシステムについて
ゼロカットとは、スイスフランショック級の超突発的な動きがあった際に、自身のポジションが証拠金以上にマイナスになったとしても追証を支払う必要のないシステムです。
例えばスイスフランショック時に国内業者でポジションを持っていた人の中には、急激すぎる動きのために損切りの逆指値注文がヒットせずにかなり遠く離れたレートで約定した人もいました。
特に顧客の多いDMMFXで強制ロスカット後の追証が問題になりましたね。
しかしゼロカットシステムを採用する業者の場合は、証拠金以上を取られることはありません。言ってみれば、顧客のリスクを業者が引き受けてくれることになるのです。
国内業者はなぜNDDに移行しないのか?
ここから本題に入ります。
国内のFX業者の多くがDD方式です。
中にはNDDを売りにしている業者もあるのですが、広告をバンバン出している大手の業者はまずDD方式を採用しています。
ではなぜDD方式ががメジャーなのかと言いますと、その理由は業者間の競争の激化によるものだと思われます。
1998年の金融規制緩和によって誕生したFX取引ももうすぐで20年を迎えます。
この間で日本国内のFXは急成長を遂げ、今やFX取引の世界シェアの約半分を占めています。これは、外為オンライン、DMM.com証券、GMOクリック証券が世界取引高でトップ5に入っていることを考えれば容易に想像できます。
FX大国となってしまった日本のFX業者間では顧客獲得のための競争が激化しています。
ギャンブルが好きな国民性である日本人顧客の多くは、短期トレードであるデイトレやスキャルがメインとなりますので、スプレッドや売買手数料が少ない方が好まれるのです。
NDDを採用すると、どうしても呑みやマリーによる利益が出せなくなるために取引手数料が必要となります。
そうなれば顧客に割高感を与えてしまうため、DD方式が採用されているのでしょう。
日本国内の業者は、なぜゼロカットシステムを取り入れないのか
国内業者が業者間の競争に勝つために低スプレッドと取引手数料ゼロを提供できるDD方式を採用していることは分かりました。
それなら、なぜゼロカットシステムを採用しないのでしょうか?
ゼロカットを採用すれば、業者間の熾烈な争いの中から一歩抜けられるはずです。
その理由は金融商品取引法にあります。
金融商品取引法第三十九条に「顧客の損失分を業者が補てんしてはいけない」と決められているため、国内業者はゼロカットシステムを導入したくてもすることが出来ないのです。
つまり業者側からすればやりたいけど出来ない、と言った所かもしれませんね。
この規定にも例外はあり、業者側にシステムの障害等があれば、顧客の損失を補てんできることになっています。
このゼロカットが出来ない金商法三十九条ですが、私としては顧客の損失を減らすためにレバレッジ規制をやる前に、ゼロカットを容認した方が良いのではないかと思います。
このまま国内FX業者はガラパゴス化が進むのか?
数年前から「今後のFXはNDDが主流になる」と言われてきました。
確かに海外業者ではNDDが主流になってきていますが、国内業者はまだまだと言わざるを得ません。
他にも、業者独自のツールがある、基本的に取り扱う通貨も少ない、金融庁の指導によりEA自体の売買をしにくいなど、世界的な流れとは違う方向に進んでいる感じがします。
このまま進めばガラパゴス化は避けられないでしょう。
日本と言う国はFXについても独自の進化を遂げたのかもしれませんね。