上昇相場と下落相場ではスピードが違うのは本当?検証してみた

一般的に、「上昇は穏やか」、「下落は一気に動く」と言われています。

確かに実際にトレードしていると、ロングポジションはなかなか伸びないし、定期的に強めの押し目が入って、ポジションを伸ばしにくい印象があります。(そして利食った直後にまた上げていくこともしばしば)

また、ショートの場合は、上手くいくと「ガラ」と呼ばれるナイアガラの滝を彷彿とさせるような下落を取ることができて、短時間で一気に利益が伸びやすいイメージがあるのではないでしょうか。

実際に、直近のポンドドルの動きを見ると、下のようになっており、

確かに下げ相場の方が勢いがあるように見えますね。

これは感覚的なものなのでしょうか?
それとも本当に上昇は穏やかで下落は一気に動くのでしょうか?

気になったので調べてみました。

 

結論

今回の検証では、「上げ相場も下げ相場も速度は変わらない」という結論に至りました。

上げるときと下げるときのスピードが違う理由とは?

上げ相場がゆっくりで、下げ相場が早いというのは一種の通説にもなっているわけですが、以下のような事が要因とされています。

上げ相場と下げ相場の速度が違う理由
  1. 上昇にはエネルギーが多く必要だから必然的にゆっくりになる。楽観的なので振幅が大きい。
  2. 下落は上昇するまでに貯めこまれたエネルギーが一気に解放されるから早い。また、悲観視されやすいので下げる時は一気に下げる。

 

こういった意見は確か株式や商品などでは理解できます。
しかし、通貨同士の交換でもあるFX市場では片方の通貨が買われたら、必ずもう一方の通貨は売られる構造になっているため、少し理屈が違います。

そのため、上記の理由が本当にFX市場に当てはまるのかは疑問が残るのです。

ナイアガラをひっくり返したらどうなる?

多くの人が、勢いのある下落相場と言えば下のような動きが頭に浮かぶでしょう。

これは8月28日のポンドドル5分足です。
一気に勢いよく下げています。

このような強い動きは上昇トレンドではあまり見られないでしょうか?
チャートの上下を反転させたドルポンドチャートをご覧下さい。

あれ?見たことあるような・・・。
そんな気がしませんか?勢いのある上昇トレンドの時はこういった動きを見せますよね?

 

ではもう一例をご覧ください。
下のチャートは9月3日のドル円のチャートで、ISM製造業景況指数発表で暴落しました。

それまでゆっくり上げていた状態から否定するような長大陰線が出現しています。

ではこのチャートの上下反転させた円ドルチャートをご覧ください。

反転させた方も、トレンド終わりに一気にショートカバーが入ったような動きに見えませんか?小さな時間足であれば、上げパターンも下げパターンもよく見られる光景ではないでしょうか?

実際に検証してみた

チャートを反転させただけでは統計的に分からないため、本当に上げ相場と下げ相場ではスピードが違うのかを過去のデータを利用して検証しました。

検証内容

日足のデータから、上昇した日と下落した日の値幅(終値-始値)の違いを比較する。
本当に通説が正しいのであれば、上昇した日の値幅は小さく、下落した日の値幅は大きいはずである。

■検証期間

2009年1月1日~2019年8月31日まで
(ローソク足の本数は2772本)

■検証通貨ペア

ドル円、ユーロ円、ポンド円、ユーロドル、ポンドドル

検証結果

ドル円

ドル円データ
2009年1月2日のレート:90.86円
2019年8月30日のレート:106.25円
ローソク足の本数:2772本
陽線の数:1355本(48.9%)
陰線の数:1417本(51.1%)
陽線の平均の値幅(実体):40.9pips
陰線の平均の値幅(実体):42.4pips

上下均等に動いているように見えます。
少し陰線の日の値幅の方が大きいですが、大きな差という程では無いようです。

ユーロ円

ユーロ円データ
2009年1月2日のレート:127.52円
2019年8月30日のレート:116.75円
ローソク足の本数:2772本
陽線の数:1388本(50.0%)
陰線の数:1384本(50.0%)
陽線の平均の値幅(実体):62.1pips
陰線の平均の値幅(実体):63.9pips

ユーロ円も平均の値幅で見ると陰線も陽線も大きな違いはありません。
2016年に大きく下げているのは、ブレグジットショックの時です。

ポンド円

ポンド円データ
2009年1月2日のレート:134.28円
2019年8月30日のレート:129.31円
ローソク足の本数:2772本
陽線の数:1389本(50.1%)
陰線の数:1383本(49.9%)
陽線の平均の値幅(実体):79.2pips
陰線の平均の値幅(実体):81.0pips

ポンド円も平均の値幅は陰線も陽線も大差ありません。
ブレグジット時は2000pips程下げたんですね・・・。

ユーロドル

ユーロドルデータ
2009年1月2日のレート:1.4032ドル
2019年8月30日のレート:1.0986ドル
ローソク足の本数:2772本
陽線の数:1408本(50.8%)
陰線の数:1364本(49.2%)
陽線の平均の値幅(実体):54.3pips
陰線の平均の値幅(実体):55.6pips

グラフ的にも均等なのが分かりますね。
また、この間ではユーロドルはかなり下落しましたが、それでも陰線と陽線の比率や平均の値幅に違いはありませんでした。

ポンドドル

ポンドドルデータ
2009年1月2日のレート:1.4786ドル
2019年8月30日のレート:1.2157ドル
ローソク足の本数:2772本
陽線の数:1380本(49.8%)
陰線の数:1392本(50.2%)
陽線の平均の値幅(実体):61.5pips
陰線の平均の値幅(実体):61.9pips

ポンドドルもブレグジットショック時の下げが目立ちますが、他の通貨ペアと同様に陰線と陽線では値幅に違いはありませんでした。

「上昇はゆっくり、下落は速い」はFX市場では通用しない

今回の検証結果からは、上昇はゆっくりで下落は速いという結論には至りませんでした。

確かに陰線の値幅の方が1.5pips程大きい傾向はありましたが、それほど大きな差ではないと考えられます。

ただし、今回の検証の反論点としては、日足データのみで検証しているため、小さな時間足、特にティックレベルで本当に上げと下げの速度が同じなのかは分からないという懸念はあります。

しかし相場の動きはフラクタルであることや、通貨ペアの取引は「片方を売ったら片方を買う」という両替形式になっている以上は、その可能性は低いかなと思っています。

「下げる時の方が勢いがある」というのはどうやらチャートを見ている我々の感覚的なものの方が強いのではないでしょうか。

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