複利効果を最大に伸ばす「ケリーの公式(ケリー基準)」でシミュレーションしてみた

相対性理論を考案した20世紀最大の科学者である、アルバート・アインシュタインが「人類最大の発明」「宇宙で最も偉大な力」と呼んだものがあります。

それが「複利」の力です。
複利の効果は凄まじく、上手に使いこなせば等比級数的に資金を増やすことが可能になります。
しかし、使い方を間違えば一気に資産を失う可能性も秘めています。

では、上手に使いこなすとは具体的にどうすれば良いのでしょうか?
今回の記事では、複利の力を最大限に発揮するための計算式である「ケリーの公式」について解説します。

この記事を読めば、最短で資金を増やす資金管理方法が分かります!

  ケリーの公式の他にケリー基準という言葉もあります。
人によってはこの二つは違うといった主張もありますが本記事では同じものとして解説していきます。

複利運用と単利運用について

トレードや投資の運用方法には大きく単利運用と複利運用があります。
ケリーの公式に入る前に、まずはこの二つについて理解しておきましょう。

複利運用とは?

複利運用とは、トレードや投資で得られた利益を再投資していくやり方です。

例えば、初期投資額が100万あったとします。
この資金を利用して10万円の利益が出た場合、この利益分も投資資金に加えて、次は110万円で投資していくのが複利運用です。

単利運用とは?

単利運用は、複利運用とは異なり、トレードや投資で得られた利益分は再投資しません。

例えば、初期投資が100万円あったとして、10万円の利益が出た場合はその利益分は差し引いて、次回からも100万円で投資していくやり方です。

単利運用と複利運用の比較

あくまで一例ですが、優位性のあるトレードルールで単利運用と複利運用をシミュレーションして比較したグラフが以下の通りです。

どれも100万円からスタートしていますが、全体として複利運用の方が多くの利益を出していることが分かります。

詳しい内容については以下の記事をご覧ください。

複利運用の効率を最大化するケリーの公式

複利効率を最大化

複利運用はトレードで得られた資金を再投資していくわけですが、毎回のトレードで口座資金全額をリスクにさらしていたら、すぐに破産してしまいます。100%勝てる手法があるのなら、常に全力投球でも大丈夫ですが、聖杯は存在しません。

例えば、100万円口座資金があって、1回のトレードで100万円をリスクにさらしたら、1回負けただけですべてを失ってしまいます。

そうならないためにも、1回のトレードで口座資金の何%をリスクにさらすか?が非常に重要になっていきます。

例えば、口座資金の1%を1回のトレードリスクとして運用していく場合を考えてみてください。
これなら数回連敗した程度ではビクともしない資金管理戦略です。
しかし、取るリスクは少ないですから、その分だけ得られる利益も減ります。

では口座資金の20%を1回のトレードリスクとした場合は?
この場合は、勝っても負けても口座資金に大きな変動がみられることでしょう。
そのなかで連勝に続く連勝があれば、口座資金は面白いくらいに増えていくはずです。

このように、複利運用の場合は1回のトレードリスクをどれくらいにするかで、その後の資金の伸びが大きく変わるのです

では、複利運用で最も効率よく資金を増やすとしたら、1回のトレードリスクはどれくらいにすれば良いのでしょうか?賭けすぎてもダメ、少なくてもダメ・・・。

複利曲線1

リワードを最大にするために、リスクをどう設定すれば良いのか?

この疑問に答える計算式が今回の記事のメインとなるケリーの公式です。

ケリーの公式とは

ケリーの公式とは以下のような計算式になります。

ケリーの公式

F=[(R+1)P-1]/R

P=勝率、R=損益率(リスクリワードレシオ)

例えば勝率50%で損益率が1.5のトレード手法があったとします。
これを上記のケリーの公式に当てはめると以下のようになります。

F=[(1.5+1)×0.5-1]/1.5
=0.25÷1.5
=0.16666

導かれた値は0.1666。
つまり、このケースでは1回のトレードで口座資金の0.166倍(16.6%)のリスクを取って複利で取引していくと、資金が最大に増える、ということになります。

 上記の式が通用するのは、勝率と損益率が明確に決まっている場合です。
そうでない場合はオプティマルfを求める必要があります。オプティマルfは、ラルフ・ビンスの資金管理の本で詳しく書かれています。

ケリーの公式でわかること

ケリーの公式でわかるのは、資金を最も効率よく増やせるリスクの取り方だけではありません。実はそれよりも、もっと有益な情報をもたらしてくれます。

複利曲線2

上の図にも書いてありますが、ケリーの公式から分かる事についてまとめます。

  • 手法の優位性が高いほど、多くの金額を賭けられる
  • 賭け金を大きくすると資金は激しく上下する。
  • 賭け金がケリー以上になると、リターンは下がっていく。
  • ケリーの2倍でリターンはゼロ、2倍以上だとリターンはマイナスになる。
  • ケリーよりも大きなリスクを取るのは賢明ではない。

ケリーの公式では、複利で資金を増やす場合、リターンを最大に伸ばすための割合が求められます。
しかしそれよりも大事なことは、ケリー以上のリスクをとってもリターンは下がると言うことでしょう。

大きなリスクを取れば取るほどリターンも大きくなる、という考えが通用するのはケリーの公式で求められる割合までなのです。

それ以上のリスクを取る事は、無駄に資金の変動が大きくなる上にリターンも下がっていく・・・という愚行になります。

「そんなにリスクを取らないよ!」

と思っている人も多いでしょう。

しかし、損切り出来ずにクソポジを放置したり、ナンピンやマーチンを使っていくことで、気づいたらケリー以上のリスクを取っていた・・・というケースもよくあるものです。

特に初心者は何も知らずにケリー以上のリスクを取って、破滅することが多いです。

ケリーの公式でシミュレーションしてみた

では、ケリーの公式を利用することでどれくらい資金が増えるのでしょうか?
シミュレーションしてみました。

シミュレーションルール

今回のシミュレーションでは、先ほどの例でも出したパフォーマンスの手法をベースに行います。

勝率50%、損益率1.5
f=0.166(資金の16.6%のリスクを取って複利運用することでリターンが最大になる)

このトレード手法のパフォーマンスは、情報商材の宣伝に見られるものと比較すると大したものではありませんが、しっかりとた優位性はあります。

この手法で以下のシミュレーションを行いました。

シミュレーションルール

初期投資資金を100万円とする。
1回のトレードリスクを16.6%取っていく資金管理方法(ケリー)で100回トレードする。

簡単に言えば、ケリーの公式で求められた数字で資金管理して100回トレードしたら、100万円はいくらに増えるか?というシミュレーションです。

なお、今回は100回のトレードを1セットとして、10セット分シミュレーションしています。

また、ケリーの資金管理で得られたリターンを比較するために、以下の条件でも同様のシミュレーションを行いました。

  • 半ケリー(ケリーの半分だけ賭ける、今回は1回のトレードで8.3%のリスクを取っていく)
  • 倍ケリー(ケリーの倍賭ける、今回は1回のトレードで33.2%のリスクを取っていく)
  • 2%ルール(資金の2%で運用する)
  勝率50%、損益率1.5の勝ち負けの推移については、エクセルのランダム発生機能を利用しています。

シミュレーション結果

ケリールール

ケリーのシミュレーション結果1
(10セット分の結果をグラフ化しています)

100万円スタートでしたが、凄いセットになると、100回目のトレードが終わった時点で8,000万円を超えています。たった100回のトレードで資金が80倍になる・・・というのはとんでもない事ではないでしょうか?

しかしこれはあくまでも10セットの中の1セットに過ぎません。
ほとんどのセットが下の方で団子になっていますので、目盛を対数にしました。

ケリーのシミュレーション結果2

こう見るとほとんどが1,000万円以下のリターンになっています。
(それでもかなり凄い事ですが)

そして黄色いラインを見ると、マイナスにで終わっています。
このように、セットによって資金の伸びの違いが出るのは、同じ50%の勝率で100回取引したとしても、勝ちや負けの連続具合で資金の伸びが変わってくるからです。つまり、優位性のあるトレードを続けて複利運用していたとしても、運が悪ければ損失が出ることもあるのです。

半ケリールールの場合

半ケリーのシミュレーション結果1

半ケリールールの場合は、一番伸びたセットで1,600万円弱でした。
そして中央値としては400万円辺りになりますので、ケリーよりも低リスクながらも悪くない資金の伸びと言って良いのではないでしょうか。

倍ケリールールの場合

半ケリーのシミュレーション結果2

倍ケリールールでは、一番伸びたセットでは1億3000万円まで資金が増えました。
これは今回の検証で最大のリターンとなったのですが、他のセットでは悲惨な結果となっています。

分かりやすく対数目盛にしてみました。

倍ケリーのシミュレーション結果1

10セット中、4セットがマイナス、3セットがほとんど利益が出ていないという結果になりました。
ケリーや半ケリーと比較すると厳しい結果ではないでしょうか。

2%ルールの場合

倍ケリーのシミュレーション結果1

ある意味一番堅実だったのが2%ルールでした。
マイナスになったセットは一つもありませんでしたし、セットの違いによる変動幅も小さいものとなりました。

各ルールにおいて、100回トレードした結果

では最後に、各ルール、各セットにおいて100回トレードした後の資金量を表にまとめました。
100万円が最終的にいくらになったのかご覧ください。

ケリー半ケリー倍ケリー2%ルール
セット1770464103160
セット2580012865863205
セット325868551166185
セット420740102
セット5770464103160
セット634330921145
セット78686157813147215
セット8770464103160
セット951437846152
セット102292529138

一番大きな利益を出せたのは倍ケリーの7セット目でしたが、それ以外は悲惨な結果に終わっています。

トータルで見れば、確かにケリーが一番利益が出せるように見えます。
しかし、資金推移のグラフを見ればその波の激しさや、勝ち負けの流れによって結果が大きく違ってくることを考えると、実際に運用するのは精神的にも厳しそうです。

また、半ケリーはケリーよりもリターンは小さいものの、堅実な結果となりました。
半ケリーを勧める人が多いのにも納得です。

ケリーの公式のメリット・デメリット

ケリーの公式で運用するメリット
  • 複利で運用した時に資金が最大に増える
ケリーの公式で運用するデメリット
  • 資金のボラティリティが激しすぎる
  • 取引額一気に変わるため、トレーダーの精神的負担が大きい
  • トレード手法の勝率や期待値はあくまでも「推計」なので、場合によってはケリーでもリスクを取りすぎてしまうことになる。
  • 取引手法に優位性が無ければ当然勝てない

ケリーの公式はトレードの最大の目的である「資金を増やす」を叶えるものではありますが、諸刃の剣でもあります。

資金の増減が激しいと、精神面の影響も大きくなります。
ケリーの公式を利用してトレードできる人は、ある意味才能があると思います。

ケリーの公式の利用者達

ケリーの公式は資金を複利運用をする上で資金を最大限に伸ばせる、と言うことから、多くのトレーダーやギャンブラーの支持を得ています。

実際にケリーの公式を利用して大きな利益を出した人を二人ご紹介します。

エドワード・オークリー・ソープ

エドワード・オークリー・ソープ

エドワード・ソープは、当時彼と同じ職場の「ベル研」にいたジョン・ケリーの考案した「ケリーの公式」をカジノや市場取引で利用した最初の人です。

ソープはカジノのゲームの一つであるブラックジャックのルールの中にある隙をついた必勝法を考案し(カードカウンティング)、これにケリーの公式を加えることで大きな利益を出しました。

しかし、勝ち過ぎて有名になり、やがてカジノからは追放されたため次は市場をターゲットに。そこでスタティスティカルアービトラージを生み出し、ヘッジファンドマネージャーとして大成功をおさめます。

ラリー・ウィリアムズ

ラリー・ウィリアムズ

ラリー・ウィリアムズは、1987年のロビンスカップで、1万ドルを111万ドル(11100%の利益率)まで増やした実績をもつ伝説的なトレーダーです。
この111倍という数字は、30年過ぎた現在でもまだ破られていません。

彼がこの時の資金管理で利用していたのがケリーの公式でした。

 その後の1997年、彼の娘であるミシェル・ウィリアムズも1000%のリターンを上げてロビンスカップで優勝しています。

ケリーの公式でトレードするべきではない

以上、ケリーの公式を使ったシミュレーションでした。
ケリーの公式を使って資金を運用すると、理論上は資金が最大に伸びます。

しかし、実際にケリーを利用したことのあるエドワード・ソープやラリー・ウィリアムズは、資金の変動が大きすぎることや、市場が変わってトレード手法の優位性が無くなるリスクを考えると、「使うべきではない」という結論に至ったようです。

その代わりにハーフケリー(半ケリー)程度にリスクを落として取引することを推奨される事も多いですが、それでも取るリスクとしては大きいように思います。

ケリーはあくまでも参考までに。
資金管理で一番重要なのは、資金の変動に自分が耐えられるレベルに調整することです。

自分の手法を信じてどんなに資金が変動しても、一貫してトレードが続けられるのであれば話は別ですが、そうでなければ、1回のトレードのリスクは2%以下にしておく方が長期的に見ると有利かなと個人的には考えています。

資金管理戦略の参考になれば幸いです。

 

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