非農業部門雇用者数とADP雇用統計に相関はあるのか?

アメリカの指標の中で、「雇用統計」と名のつくものは2種類あります。

一つはアメリカのADP社が発表する「ADP雇用統計」、そしてもう一つがアメリカの労働省労働統計局が発表する「雇用統計」です。

両者ともアメリカの「雇用状況」を報告するもので、市場参加者からの注目度は非常に高いのですが、この二つの違いについてご存知でしょうか?

今回は2つのアメリカの雇用統計と、その関係性について調べてみました。

2つの雇用統計について解説

まずは今回の記事の主題となる2つの雇用統計について解説します。

米労働省労働統計局の発表する雇用統計とは?

アメリカの雇用統計と言えば、コレです。
発表日は毎月第1金曜日、時間は夏時間で21時30分、冬時間で22時30分。
発表直前からお祭り騒ぎの値動きを見せてくれる、指標の王様です。

雇用統計は米労働省がアメリカの雇用状況を調査した景気に関する経済指標です。「雇用統計」と言っても実は統計項目は多く、主に以下のような事項が発表されます。

  • 失業率
  • 非農業部門雇用者数(NFP)
  • 建設業就業者数
  • 小売業就業者数
  • 金融機関就業者数
  • 週労働時間
  • 平均時給

この中で市場関係者が最も注目しているのが、失業率と非農業部門雇用者数(NFP)です。

特に非農業部門雇用者数は、前月比でどれだけの非農業部門の雇用者数が増えたかを示すもので、アメリカの経済状況を色濃く反映しています。
そのため、これらはアメリカの金融政策に大きな影響を及ぼします。

 

ADP雇用統計とは?

ADP雇用統計はアメリカの民間給与計算アウトソーシング会社であるADP(Automatic Data Processing)が約50万件の顧客を対象に雇用者数を調査して発表している指標です。発表開始が2006年と比較的新しいのが特徴です。

発表される内容は、米雇用統計中の非農業部門雇用者数と同じで「前月比でどれだけ雇用者数が増えたか?」です。

そのため、ADPとNFPは被ってしまうのですが、ADP雇用統計の方が2日早く発表されるため(多くの場合で第一水曜日、発表時間は夏時間で21時15分、冬時間で22時15分)、米雇用統計発表本番の前哨戦的な扱いとなっており、ADPでも大きく動くことがよくあります。

非農業部門雇用者数とADP雇用統計に相関はあるのか?

非農業部門雇用者数とADP雇用統計は、発表する機関や調査規模、調査方法は異なるものの、両者とも「前月比での雇用者の増加数」を示すことに違いはありません。

ではこれらに相関はあるのでしょうか?
2013年以降のデータを用いて調査してみました。

■非農業部門雇用者数(NFP)の推移(万人)

 

■ADP雇用統計の推移(万人)

上記のデータを用いて、その推移をグラフ化しました。

 

■NFPとADPの推移のグラフ

ある程度連動しているような連動していないような・・・。
NFPの方が数値のブレは大きいのは分かりますが、結果に相関があるのかは明確には分かりません。そこで、散布図にしてみました。

 

■NFPとADPの散布図

全く相関無しですね。
ちょっと予想外ですが、数値のみで検証した場合このような結果になりました。

それでもADP雇用統計は非農業部門雇用者数の目安として認識されている

今回の検証ではADP雇用統計はNFPと相関関係は無いという結果になってしまいましたが、それでもADP雇用統計はNFP前の目安として認識されています。

例えばつい先日の5月の雇用統計結果ですが、ADP雇用統計では25.3万人増加と非常に良い数字でした。
その結果、「これだけ良い数字なんだから、NFPの結果も良好だろう」「予測値を超えて来るだろう」と市場参加者は考え、ドル買いが進みドル円は上昇しました。

 

しかし、雇用統計本番では失業率は低くて好調だったものの、非農業部門雇用者数の結果は13.8万人と非常に残念な数字。
その結果、ドルの失望売りにつながり、ドル円は暴落しました。

このような感じで、実際には相関が無くともADP雇用統計は非農業部門雇用者数の予測の参考に使われています。

テクニカル一辺倒の方は指標の内容について詳しくない方も多いですが、こうやって見ていくと、指標を介して市場参加者の「読み」も見えてくることがありますね。

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